『アイの歌声を聴かせて』は“AI全盛”の今こそ刺さる! 夏休みに味わいたい“幸せ”の連鎖
そして『アイの歌声を聴かせて』を語るうえで欠かせないのが音楽。主演の土屋太鳳が劇中で4曲を披露し、その高い歌唱力に驚かされた観客も多いだろう。元宝塚歌劇団トップ娘役・咲妃みゆが歌う劇中アニメ「ムーンプリンセス」の楽曲も印象的で、高橋諒によるフィルムスコアリング形式のBGMは耳に残るクオリティばかり。さらに公開時には、岩浪美和音響監督の監修による特別音響版<サウンドネーム>上映まで行われており、この作品が“音”に徹底してこだわっていたことが伝わってくる。
細かい注目ポイントとして挙げたいのが、悪役ポジションの西城役を津田健次郎が演じていることだ。『呪術廻戦』の七海建人役や『テニスの王子様』の乾貞治役など、アニメファンにとってはおなじみの存在だが、最近はNHK連続テレビ小説『あんぱん』などのドラマへの出演でも広く話題を集めている津田。ドラマやアニメでのメインキャラクターで津田を知った人にこそ、本作でのサブキャラクターとしての圧倒的な存在感を味わってほしい。
AIをめぐる議論が尽きない今だからこそ、『アイの歌声を聴かせて』の立ち位置は少し特別だ。未来の社会をどう捉えるかではなく、人の心や関わり合いに焦点を当てた作品だからこそ、観終わったあとに残るのはAIそのものへの是非ではない。むしろ、“AI(アイ)を通して人間の心のあり方を考えさせられる”という、より本質的な感覚だ。
アイという存在に触れたとき、自分の心にはどんな変化が生まれるのか。そんな体験を求めて本作に身を委ねてみるのも、一つの楽しみ方かもしれない。
■放送情報
『アイの歌声を聴かせて』
NHK Eテレにて、8月30日(土)19:45〜放送
声の出演:土屋太鳳、福原遥、工藤阿須加、興津和幸、小松未可子、日野聡、大原さやか、浜田賢二、津田健次郎、咲妃みゆ、カズレーザー(メイプル超合金)
原作・脚本・監督:吉浦康裕
共同脚本:大河内一楼
キャラクター原案:紀伊カンナ
総作画監督・キャラクターデザイン:島村秀一
歌:土屋太鳳
アニメーション制作:J.C.STAFF
©吉浦康裕・BNArts/アイ歌製作委員会