『19番目のカルテ』魂を震わす杉田雷麟の演技 松本潤が傾聴する患者の心の声
細分化された診療体制で、19番目の診療科である総合診療科は、病名がわかった時点で仕事が終わるように見えなくもない。しかし、松本潤演じる徳重を見ていると、病名を確定することがゴールではないことがわかる。
診療科に患者を受け渡し、適切な治療方針を見いだすことを含めて、徳重は一人ひとりとトータルで接している。機能分担し分節化した現行制度はセクショナリズムの危険をはらんでいる。欠けた部分を補いながら、医療をプロセスとしてとらえ、患者の人格を尊重する重要性をドラマを通じて表現していた。
患者の全人格と向き合うことは、決して簡単なことでない。本人が心の奥にしまった負の感情や、患者自身の嫌な部分と向き合うプロセスでもあるからだ。徳重はそれをわかっているから、17歳の拓に対しても「全部合わせて岡崎拓なんだ。それでいいんだよ」と否定せずに受け止めたのだろう。
拓の苦しさを思うと言葉が出ない。病気の弟がいなければと願ってしまうほど、ギリギリまで自身を追い詰めながら、周囲を責めなかった拓のけなげさ。ヒーローと怪獣が拓の中で戦っていて、徳重や有松のようにわかってくれる人がいると思えるだけで、どれだけ救われるだろうか。『ガンニバル』(ディズニープラス)で後藤一族の後藤洋介を演じて注目された杉田雷麟の真摯な演技に胸が震えた。
患者に向き合う徳重の姿は、周囲を変えつつある。自身の未熟さを悟った滝野(小芝風花)は、徳重に憧れて総合診療科への転属を希望するが、拓の一件を目にして、自分にしかなれない医師を目指そうと決意する。他者を大事にすることが、自己と向き合うことでもあると伝えていた。
富士屋カツヒトによる連載漫画『19番目のカルテ 徳重晃の問診』を原作に、坪田文が脚本を手掛けるヒューマン医療エンターテインメント。松本潤がキャリア30年目にして初となる医師役に挑む。
■放送情報
日曜劇場『19番目のカルテ』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:松本潤、小芝風花、新田真剣佑、清水尋也、岡崎体育、池谷のぶえ、本多力、松井遥南、ファーストサマーウイカ、津田寛治、池田成志、生瀬勝久、木村佳乃、田中泯
原作:富士屋カツヒト『19番目のカルテ 徳重晃の問診』(ゼノンコミックス/コアミックス)
脚本:坪田文
プロデューサー:岩崎愛奈
企画:益田千愛
協力プロデューサー:相羽めぐみ
演出:青山貴洋、棚澤孝義、泉正英
編成:吉藤芽衣、髙田脩
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