『ちはやふる』から考える10年で変わった若者の価値観 Z世代にとって青春は“贅沢品”に

 ただしドラマ版では、千早のような“主人公感のある”キャラクターが別にいる。瑞沢高校のエース・月浦凪(原菜乃華)だ。クイーンを目指す彼女は、千早から直接指導を受けた“正統後継者”。一方のめぐるは、その輝きを斜め後ろから見つめる存在である。この対比構造が秀逸で、めぐるの内面に生まれる劣等感、憧れ、反発が、物語に奥行きと深みを与えている。“主人公になりたくなかった主人公”が「自分も熱くなっていいのか」と心のどこかで問いかけるとき、観る側にもその問いが返ってくる。

『あんぱん』『ちはやふる』勢いが止まらない原菜乃華の飛躍 魅力は“主役級の存在感”にあり

「お姉ちゃん、一生のお願いっちゃ〜!」  NHK連続テレビ小説『あんぱん』第68話では、朝の支度中、モジモジとしながらなんだか…

 第2話のラストで奏からかるた部への入部を勧められためぐるは、「できません。ここで贅沢をしたら、また全部水の泡になる」と断るが、続けて「でも、もし先生がエビデンスになってくれるのなら……かるたで宝物を見つけられた人には、その10年先に必ず明るい未来が待っているんだって、私に見せてください」と、すがるように訴える。

 人生をタイパで割り切る高校生が、“今しかできない贅沢”にどう向き合うのか。その答えは、これからめぐる自身が選び取っていくことになるだろう。そして同時に、このドラマはめぐるのようなドライな若者たちに問いかける。「効率を超えてまで、何かに夢中になったことがあるか?」と。

ちはやふる-めぐり-

2016年から2018年にかけて公開された映画『ちはやふる』シリーズの10年後の世界を舞台にした作品。廃部の危機にある梅園高校・競技かるた部の藍沢めぐるが、顧問として赴任してきた大江奏と出会い、成長していく。

■放送情報
『ちはやふる-めぐり-』
日本テレビ系にて毎週水曜22:00〜放送
出演:當真あみ、原菜乃華、齋藤潤、藤原大祐、山時聡真、大西利空、嵐莉菜、坂元愛登、高村佳偉人、橘優輝、石川雷蔵、瀬戸琴楓、髙橋佑大朗、藤枝喜輝、大友一生、漆山拓実、上白石萌音、内田有紀、要潤、榎本司、富田靖子、高橋努、波岡一喜、髙嶋政宏
ショーランナー:小泉徳宏
監督:藤田直哉、本田大介、松本千晶、吉田和弘
脚本:モノガタリラボ(小坂志宝、本田大介、松本千晶)、金子鈴幸
プロデューサー:榊原真由子、巣立恭平、中村薫、平田光一
企画・プロデューサー:北島直明
チーフプロデューサー:松本京子
音楽:横山克
主題歌:Perfume「巡ループ」(UNIVERSAL MUSIC LLC)
制作協力:ROBOT、ウインズモーメント
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/chihayafuru-meguri/
公式X(旧Twitter):https://x.com/chihaya_koshiki

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