『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』は2025年を象徴する一本 “圧倒的映像美”を大画面で体感
アニメ『鬼滅の刃』シリーズの最新作、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(以下、『無限城編 第一章』)がついに公開された。劇場の規模によって上映回数には差があるものの、多いところでは1日40回以上の上映が組まれる劇場もあり、その注目度の高さは群を抜いている。
筆者は都内の映画館で初日の朝8時の回を鑑賞したが、開場時間にはすでに多くの観客で賑わっていた。上映終了時刻にはファミリー層の姿も目立ちはじめ、グッズ売り場には長蛇の列が。平日とは思えない熱狂ぶりに、改めて『鬼滅の刃』という作品の持つ圧倒的な人気を実感させられた。
本作で描かれるのは、鬼舞辻無惨の本拠地・無限城を舞台にした壮絶な戦いの始まりだ。テレビ放送や配信で作品に触れてきた人のなかには、少し時間が空いて記憶が曖昧になっているケースもあるだろう。そうした観客には、最低限『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』だけでも振り返っておくことをおすすめしたい。上弦の参・猗窩座が炎柱・煉獄杏寿郎と激闘の末に彼を殺し、炭治郎たちの心に深い喪失感と怒りを刻み込んだ一連の経緯を理解しているかどうかで、物語の受け取り方が根本的に変わってくるからだ。
一方で、本作が、複雑な伏線を理解しにくい年齢の子どもや、久々にアニメに触れるライト層にも配慮された、懐の深い作品に仕上がっていることは間違いない。
そう断言できる理由は、その圧巻の映像表現にある。端的に言えば、“観ているだけで身震いする”ほどの映像美が、息つく暇もなく続いていく。昨今のアニメーション技術の進歩には目を見張るものがあるが、どのシーンもこれほどまでに完成度の高いアニメ映画を体験できる時代に生きる幸運を、心から実感させられる仕上がりだ。
とりわけ3DCGを駆使した無限城のビジュアルは、まさに特筆に値する。果てしなく続く廊下、足場の形が次々とが変化する回廊……その細かさは常軌を逸しているといっても過言ではない。
テレビシリーズで無限城が初登場したのは「立志編」第26話、下弦の鬼たちが無惨に招集されるシーンだった。しかし今回の劇場版では、無限城のクオリティをさらに上げるため、当時の3Dモデルを一切使用しなかったという。
ちなみに公式パンフレットによれば、当初無限城が本作の画面に登場する総フレーム数を算出した際、「社内の全計算リソースを投入しても、映画完成までに3年6カ月を要する」との驚愕の試算が出たという。3章構成では計10年という途方もない期間が予想されたが、各セクションの血のにじむような努力と試行錯誤により、この難題を克服。結果として、これほどまでの完成度を実現してみせたのだ。
制作陣が文字通り魂を込めて創り上げた無限城は、まさに劇場の大スクリーンでこそ真価を発揮する。冒頭の炭治郎たちと柱が落下していく場面では、無限城の“縦”の奥行きが圧倒的なスケール感で表現されているが、立体的な空間をフルに活用したシーンの連続に、観客は否応なく作品世界へと引き込まれていく。ネタバレを避けるため詳細は伏せるが、無限城の複雑な構造が最大限に活かされるのが、善逸の雷の呼吸を駆使したバトルシーン。雷の呼吸を使って、“ある相手”と縦横無尽に駆け巡る躍動感は、ぜひ劇場で体験してほしい。