江口洋介、“暴走族”から“参議院選の啓発キャラ”へ 更新し続けてきたイメージを振り返る

 2025年7月20日に「第27回参議院議員通常選挙」が行われる。今回、選挙啓発イメージキャラクターとして起用されたのは、俳優の江口洋介とモデル・俳優の生見愛瑠の2名だ。

 総務庁は「俳優として活躍し、男女問わず幅広い年代からの支持と親しみやすいお人柄で人気を集める江口さんと、若い世代を中心に高い人気を誇る生見さんを通して、選挙をより身近な存在として捉え、政治への関心を深めるきっかけとなることを期待しています」とコメントしている(※1)。

 今年57歳となった大ベテランの江口だが、選挙の啓発キャラクターに起用されるのは初。80年代から着実にキャリアを積み上げ、 “クリーン”で“頼れる”イメージがしっかりと形成されてきたということでもあろう。ここで江口のこれまでの歩みを振り返ってみたい。

 江口の俳優デビューは1986年。翌1987年に青春不良映画『湘南爆走族』で主演を果たし、江口洋介の名が一気に知れ渡ることとなる。バイクと手芸を愛し、暴走族「湘南爆走族」の2代目リーダーを務める紫色のリーゼントヘアのツッパリ高校生・江口洋“助”役は、何年経っても薄れないインパクトがあった。また、見た目のイカつさとは裏腹なピュアな眼差しと爽やかな笑顔も江口のチャームポイントであり、リーゼントでバイクを操るワイルド感とのミスマッチがさらに魅力を引き立てる要素ともなっていた。

 1990年代に入ると、『東京ラブストーリー』(1991年)、『101回目のプロポーズ』(1991年)、『愛という名のもとに』(1992年)と、フジテレビの“月9”史上に名前を残すヒットドラマにメインキャストとして出演し、“90年代の顔”といえるほど人気・知名度ともに右肩上がりとなっていく。

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 その後、『ひとつ屋根の下』(1993年/フジテレビ系)で主演を果たし、これもまた大ヒットドラマとなったのだが、この『ひとつ屋根の下』を機に、これまでの“イケメン・クール”路線から、“頼れる兄貴・熱い男”路線へとシフト。この頃、江口は20代後半に差し掛かっており、このシフトチェンジは“息の長い本格派”として幅を広げていくための戦略だったのではないかと思われる。

 そして、今や江口の代表作の一つである『救命病棟24時』シリーズ(フジテレビ系)が1999年から10年間にわたって放送され、江口はシリーズ4作まで主演を務めている。医療の現場をとりまく現状をヒューマニズムあふれる視線で描く人間ドラマであった本作は、全シリーズ通して平均視聴率19%と、今や“名作”として語り継がれる作品の一つでもある。江口はクールで無口だが患者には真摯に向き合う天才外科医・進藤一生を演じており、この役を経て、“頼れる大人の男”のイメージは揺るぎないものとなる。

 しかし、江口はさらなる進化を遂げる。映画『狐狼の血』シリーズ(2018年〜)では暴力団「尾谷組」若頭の一之瀬守孝として初の極道役を演じ、『コンフィデンスマンJP』シリーズ(2018年〜/フジテレビ系)では、“日本のゴッドファーザー”と称される悪徳公益財団の会長・赤星栄介役として出演。いずれも“ラスボス”的な悪役を抑制された凄みをもって演じ切り、演技の幅、表現力の深さのレイヤーはミルフィーユのように幾重にも重なっていく。

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 そして社会派ミステリードラマ『誰かがこの町で』(2024年/WOWOW)では、心に大きな傷を抱え希望を見出せない法律事務所調査員・真崎雄一役として出演。約4年ぶりに連ドラの主演を果たした江口は、これまでの役どころとは全く違う“自信のない男”を熱演し、ここでも新境地を見せた。

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