『ちはやふる-めぐり-』映画版の2倍エモーショナルなドラマに? 醍醐味の“躍動感”も健在

 原作が完結したのがまだ3年前の2022年なので、“10年後の新たな世代を描く新章”といわれても若干ピンとこないのだが、たしかに映画版の第1作『上の句』からは9年、完結編の『結び』からも7年と、10年には満たないとはいえそれなりの時間が流れている。百人一首の1000年の歴史からしたら10年なんて誤差でしかないが、7月9日にスタートした『ちはやふるーめぐりー』(日本テレビ系)を観る限り、少なくとも“青春”の土台の部分は10年前からだいぶ変化したように思える。

 さて、今作の舞台となるのは原作や映画版の「瑞沢高校」ではなく、「梅園高校」という別の学校。大江奏(上白石萌音)が古文の教員として勤務しており、部員の少ない競技かるた部の顧問も受け持っている。その3年生の引退試合で人数合わせのために招集された幽霊部員の藍沢めぐる(當真あみ)が新たな主人公。投資を趣味にしてFIREを目標にしたタイパ重視という令和を煮詰めたようなキャラクターの彼女は、試合に敗れた自校や他校の競技かるた部員たちが涙する姿に違和感を覚える。

 一歩引いた様子のまま、まるで熱量を逸したように淡々と日々をこなす。自分自身を“脇役”だと捉え、それに甘んじていく。反応の仕方はまったく違うけれど、どことなく原作における綾瀬千早の小学生の頃と重なるものがある。千早も姉の千歳を“主人公”に据えた“脇役”として、千歳が日本一のモデルになることを自分の夢として掲げていた。しかし綿谷新とかるたとの出会いを通し夢は変化し、高校時代に入ればもう他者を寄せ付けないほどの圧倒的な“主人公感”を放つようになる(映画版ではその状態からスタートしたわけだが)。

 今回めぐるは、かるたと出会い、試合で対戦した瑞沢高校の折江懸心(藤原大祐)から「めぐりあいて」を取る。千早が新から教えてもらった「ちはやふる」と同じように、めぐるにとっての自分の名前と繋がる札だ。その点では、めぐるは“第二の千早”となってもなんら不思議ではない。ところが彼女が気後れしてしまう“主人公感”を携えた月浦凪(原菜乃華)がすでにおり、彼女は瑞沢高校なのでクイーンとかるた部の顧問という二つの夢を叶えた千早(広瀬すず)の直々の教え子でもある。

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