“ホスト”は今どう描かれるべきか? 『愛の、がっこう。』が描く格差と分断の現代社会

 木村文乃、Snow Manのラウールらが出演する連続ドラマ『愛の、がっこう。』が、7月10日22時よりフジテレビ系で放送される。高校教師の女性があるひとりのホストと出会い、やがて恋に堕ちていく禁断のラブストーリーだ。

 高校教師とホストの恋愛ドラマと聞けば、どうしたってドロドロの昼ドラ系を思い浮かべてしまう。「愛」や「憎しみ」や「嫉妬」や「欲望」をこれでもかと描き、登場人物たちが欲望に突き動かされてアウト・オブ・モラルな行動をとってしまうような、濃厚な愛憎劇を想像してしまう。

 栗原彩乃プロデューサーも、最初にプロットを知ったときは同様の感想を抱いたという。しかし脚本を読んで、「どこまでも切なく澄んだ不器用な愛の物語」だと感じ、「経済や学歴、あらゆる格差が広がり、もはや分断ともいえるような社会の中で、互いの間にある高い壁を乗り越えてゆく2人の愛と勇気」を描いた作品だとコメントしている(※1)。

 格差。分断。高い壁。まさにこれらは、現在の社会状況を表すキーワードだ。親の敷いたレールの上を歩んできた教師の愛実(木村文乃)。義務教育も満足に受けられなかったホストのカヲル(ラウール)。お互いに孤独を胸に抱く彼らは、昼と夜、交わることのないはずの世界で惹かれ合う。やがて世間の非難と憎悪にまみれていく2人の関係は、この世界の希望と絶望の両方を象徴しているのかもしれない。今の時代だからこそ産み落とされたラブストーリーなのだ。

 このドラマは、脚本家・井上由美子による完全オリジナル作品。彼女といえば、旅客機パイロットの恋と青春を描いた『GOOD LUCK!!』(TBS系)や、取調室という密室での攻防戦が見どころの『緊急取調室』(テレビ朝日系)など、ザッツ・エンターテインメントなドラマを数多く手がけてきた人気脚本家。その一方で、『白い巨塔』(フジテレビ系)で医療が抱える深い問題に切り込み、『14才の母』(日本テレビ系)で青少年の問題を提示するなど、社会的なテーマに焦点を当てた作品も数多く発表している。

 緻密な取材と鋭い視点で、観る者に深い考察を促す力強いメッセージ性と、エンターテインメントとしての面白さを両立させる手腕。井上由美子は、ドラマチックな物語を描くだけでなく、登場人物たちが直面する心理的葛藤を深く掘り下げるテクニックに長けている。もちろん、本稿執筆時点で放送は開始されていないために憶測の域を出ないが、『愛の、がっこう。』はそんな井上節が炸裂した作品になりそうな予感がしている。

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