『べらぼう』染谷将太の涙の意味を改めて考える 喜多川歌麿の今後を史実を踏まえ読み解く

 『べらぼう』の今後の展開では、歌麿は徐々に蔦重と心の距離を取るようになるはずだ。蔦重の“成功”と“家庭”に対し、自分がどこにも属していないことに気づいた歌麿が、「自分自身の絵」と「自分の場所」を探すフェーズへと移っていくのではないか。それは拒絶ではなく、むしろ愛しさを残したまま離れる、まるで「親離れ」のような過程なのかもしれない。

 寛政の改革による出版統制、蔦屋への処罰、そして時代の変化。これらの外的要因も、2人の関係に影響を与えるだろう。しかし最も重要なのは、歌麿自身の内的な成長である。蔦重の庇護から独立し、1人の絵師として立つ決意。歌麿が“特別”になれなかった悲しみを抱えたまま、それでも絵を描く理由を見つけていく――その過程が、ドラマ後半で描かれることになるのではないだろうか。

 蔦重の隣でなくても、誰かの隣でなくても、“歌麿という名”が歴史に残る。その始まりが、第26回で流した涙だったのかもしれない。

■放送情報
大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送/翌週土曜13:05~再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00~放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15~放送/毎週日曜18:00~再放送
出演:横浜流星、小芝風花、渡辺謙、染谷将太、宮沢氷魚、片岡愛之助
語り:綾瀬はるか
脚本:森下佳子
音楽:ジョン・グラム
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓、深川貴志
写真提供=NHK

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