『KPOPガールズ！デーモン・ハンターズ』の“プリキュア”的高揚感 中毒性抜群の楽曲も
そんな3人の前に現れるのは、デーモンたちで構成されたアイドルグループ「サジャ・ボーイズ」だ。彼らの曲がまた中毒性が高く、どんどん人間たちが虜になってしまう。縦型動画でいろいろな人が踊りまくり、「サジャ・ボーイズ」たちもバラエティや路上で様々な一面を見せ、異なる年齢層の人々を虜にしていく。K-POPの沼にずぶずぶとハマっていく人々の描写は、K-POP好きな筆者も他人事とは思えないものであった（実際に彼らの楽曲「Soda Pop」が頭から離れない……）。その上「サジャ・ボーイズ」のジヌが自身に起きた悲しい境遇を語るシーンや、ルミが初めてジヌを見たシーンのスローモーションの演出などが、韓国ドラマを意識したように映されていたのも見逃せないポイントだった。
もちろん「サジャ・ボーイズ」だけでなく「ハントリックス」の音楽も中毒性があって思わず体が動いてしまうような音楽性がある。それもそのはず、THEBLACKLABELのテディ・パクや、BTSやTOMORROW X TOGETHERとタッグを組んだスティーブン・カークなど多くのK-POP関係者が携わっているのだ。（※2）実際にビルボード200では2025年最高位のサウンドトラックとなり（※3）、米国Spotifyのランキングでは「Golden」と「Your Idol」が今までのK-POPアイドルの最高順位を脅かすことになった。（※4）YouTubeに公開されたリリックビデオはすでに2,000万回再生を超えているものもある。クライマックスに描かれる授賞式の控室前には、本作に参加したTHEBLACKLABEL所属のMEOVVや、本作の楽曲にも参加したTWICEのポスターが飾られているのもファンにとっては嬉しいポイントだ。
リアルなK-POPを感じられること、そして韓国ドラマ好きも入り込めるストーリー設定であることなど、いくつか本作のポイントを挙げたが、筆者がまず感じたのは「ハントリックス」が戦うシーンでの爽快さはもちろん、『ふたりはプリキュア』を観ているような懐かしさだ。普段は普通に生きているけれど実は悪の退治もしている、あの佇まいとチームワークのカッコよさにワクワクした気持ちがふっと蘇ってくる。
また、本作の声優陣も豪華。デーモンたちを束ねる存在であるグウィマを演じるのは『イカゲーム』のイ・ビョンホン。英語と韓国語の両方で声優を務めている。英語のジヌの声を『社内お見合い』のアン・ヒョソプが演じている。何語で観るか迷うところではあるが、英語で観てから韓国語で観てみるのもいい。映画のエンドロールではTWICEのジヒョ、ジョンヨン、チェヨンが劇中歌をレコーディングしている様子も登場し、ファンには嬉しい展開となっている。
韓国ドラマやアイドルのコンテンツを観ていると、必ずと言っていいほど韓国料理やインスタントラーメンが登場するが、本作も例外ではなく、おいしそうに口に運んでいる姿が食欲をそそる。カン監督が語るように、その素の表情やクスッと笑える無防備な姿も魅力的なのだ。（※5）まだ観ていない人は、一旦食事を用意することをおすすめしたい。
物語の中心となるルミは、自分自身を認め、そして認めてもらうことで自信を取り戻していった。最後の「サジャ・ボーイズ」との戦いで3人が「What It Sounds Like」を歌うシーンは、第2の「ハントリックス」が誕生した瞬間とも言えるだろう。筆者はもうすでに「ハントリックス」と「サジャ・ボーイズ」の音楽を聞きたくてたまらなくなっている。
参照
※1. https://www.indiewire.com/features/animation/kpop-demon-hunters-animation-netflix-demonology-kpop-1235133670/
※2. https://www.netflix.com/tudum/articles/kpop-demon-hunters-soundtrack
※3. https://www.billboard.com/music/chart-beat/kpop-demon-hunters-highest-charting-soundtrack-2025-1236014634/
※4. https://www.vulture.com/article/kpop-demon-hunters-songs-chart.html
※5. https://variety.com/2025/film/news/kpop-demon-hunters-soundtrack-success-1236444840/
■配信情報
『KPOPガールズ！デーモン・ハンターズ』
Netflixにて独占配信中
出演：アーデン・チョー、アン・ヒョソプ、ケン・チョン、イ・ビョンホン、ダニエル・デイ・キム、メイ・ホン、ユ・ジヨン、キム・ユンジン、ジョエル・キム・ブースター、ライザ・コーシー
監督：マギー・カン、クリス・アペルハンス
脚本：デイナ・ヒメネス、ハンナ・マクメチャン、マギー・カン、クリス・アペルハンス
