『DOPE』髙橋海人が示した“希望”と運命に争う力強さ 異能力を駆使したアクションも

 だが陣内の人物像は単純ではない。普段の彼は言葉も態度も過激で、危険人物のように思えるが、家庭では妻の妊娠を子どものように喜ぶ一面を持つ。そんなギャップが何を意味するのかはまだわからないが、12年前、幼い才木を救ったのも陣内だったとわかる場面で、その因縁はにわかに色を帯びる。

 この2人を取り巻くのが、変装を得意とし、銃を用意し、才木の過去まで知る謎の男・ジウ(井浦新)だ。第1話でも複数の顔を使い分けて暗躍し、何を狙っているのかは一切不明のまま。DOPEを巡る陰謀と犯罪シンジゲートの存在もほのめかされており、物語の広がりを感じさせる。

 また、DOPE依存症の母を抱える才木の家庭事情も気になるところだ。「この世界を壊したほうがいい」と笑う泉ルカ(久間田琳加)の存在など、才木自身の覚悟を揺さぶる火種がすでにいくつも仕込まれている。

 一度は山口の死によって解体が危ぶまれた特捜課だが、その存続が決定。だが陣内は才木の家族を人質に取るとまで口にする。脅しとも取れるその真意がどこにあるのか、才木がその運命にどう抗うのか――。

 そして第1話のラストシーン。陣内が「運命は変わらない」と言い放つ中、才木は銃を構える。ただしその銃口は陣内には向けられていない。「それが運命だとしても、俺の力はそのためにあるんです」。自分に課せられた“未来予知”という能力を、誰かを救うために使うと決意する才木の姿が、この物語の希望として描かれている。

 特殊能力を使ったバトルというと、特撮的なド派手さを想像しがちだが、本作の面白さはそこだけではない。異能力の派手さよりも、その力を持つがゆえの孤独、能力を使いこなせないもどかしさ、相反する正義がぶつかる人間ドラマにこそ、深みがある。髙橋が等身大の演技で見せる新人の未熟さと覚悟、中村が醸し出す陣内の強者感と滲み出る優しさ。2人の温度差が生む緊張感が、回を追うごとにどこまで変わっていくのか。相性最悪のバディと特捜課の仲間たちが、運命にどんな一手を打つのか。第2話以降の展開が楽しみでならない。

金曜ドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』

木崎ちあきが手掛けた同名小説を原作を実写化した麻取アクション・エンターテインメント。謎に包まれた新型ドラッグ“DOPE”が蔓延している近未来の日本で、正反対のバディがDOPEによって巻き起こる不可解な事件の解決に挑んでいく。

■放送情報
金曜ドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:髙橋海人、中村倫也、新木優子、三浦誠己、豊田裕大、久間田琳加、忍成修吾、入山法子、佐野和真、蒼戸虹子、小池徹平、真飛聖、伊藤淳史、井浦新
原作:木崎ちあき『DOPE 麻薬取締部特捜課』シリーズ(角川文庫/KADOKAWA刊)
脚本:田中眞一
演出:鈴木浩介ほか
プロデュース:長谷川晴彦、佐藤敦司
音楽:内澤祟仁
主題歌:Uru「Never ends」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
編成 :杉田彩佳、松本友香
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/DOPE_tbs/
公式X(旧Twitter):@dope_tbs
公式Instagram:@dope_tbs

 

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