『未知のソウル』パク・ジニョンの告白にドキドキが止まらない リュ・ギョンスの過去に涙
これまでの物語の中では、「演技力に定評のある実力派キム・ソニョンでなくてもいいのでは?」というほど、これといった特徴のないように思えたブノン。教頭先生らしい、品格と落ち着きを持つ彼女が、ホスを悪く言われて獣のように豹変するさまは、まさにキム・ソニョンの真骨頂だ。パニックスリラー映画『コンクリート・ユートピア』でも、キム・ソニョンは狂気の母性愛を体現した。『椿の花咲く頃』や『愛の不時着』などに出演し、第56回百想芸術大賞で助演女優賞を受賞したのが記憶に新しいキム・ソニョン。ホスの母ブノン役が、なぜ名バイプレーヤーの彼女でなければならなかったのか。それはブノンとホスの物語の隠されていた秘密にあった。ブノンは、ホスの亡き父(キム・ジュホン)の後妻で、ホスはブノンの実子ではなかったのだ。ブノンは、家族から反対されて縁を切られてまで選んだ相手を事故で亡くし、血縁関係のないホスを女手一つで育てあげた。ブノンの物語に大いに涙腺を刺激され、涙がこみ上げる。
ブノンとオッキに祖母(チャ・ミギョン)も絡む、母たちの物語に涙を流しているうちに、ホスとミジの恋が成就する。ホスが2人の入れ替わりに気づいていたことがあっけなくミレから告げられ、わたわたするホスとミジがすこぶるキュートだ。ミレの我関せずのクールさが面白い。互いに思い合っているにもかかわらず、煮え切らないふたりの恋のキューピッドとなったのは、ミジの親友ギョング(ムン・ドンヒョク)だ。ミジの元カレと言われながら実は付き合っていなかったギョングは、ミジとホスをそれぞれ焚きつける。ギョングは、すこぶる“いい奴”で、ミジとギョングの友情もとてもいい! ミジとギョングが「ハムチョル」のタトゥーで仲良くはしゃぐ姿がなんともかわいらしく微笑ましい。
完璧は求めなくていい、完璧なタイミングなんてない。ギョングのアドバイスが胸に響く。ホスの意を決したミジへの恋の告白は、なんともロマンティックで何度も見返してしまった。「君の心が落ち着いて、僕がより良い人間になったら、その時に言おうと我慢してたけど 今、言うよ。好きだ ずっと前から ものすごく」“より良い人間になったら”告白しようだなんて(もうすぐ! いつでも言ってください!)、なんて誠実で素敵な人なのだろう。長い時間1人の女性を想い続けた一途なホスを演じるパク・ジニョンの純情な演技は、なんて魅力的なのだろうか。「好きだ」「ずっと前から」「ものすごく」この倒置法の告白が最高に最高にとんでもなく良い! スロー再生したいぐらいである……!
ミジとホスの恋が盛り上がる中で、ミレの恋もゆっくり進展している気配だ。ミジ、ミレ、ホス、セジンの4人が一堂に会したことで、セジンもミレの入れ替わりに気づく。セジンが、祖父の死をきっかけに農場を継いだ経緯も明かされ、ここでも涙が零れてしまった。祖父の最期の電話を取れなかったというセジンの苦しみが伝わってきて悲しい。自分が電話に出ていたら、もしかすると祖父は助かったかもしれないのに...…という無念をセジンは抱えているのだろう。
本作は、第1話からずっと目が離せない。その面白さは、立て続けに波乱万丈な事件が続くような展開ではなく、『未知のソウル』が「感情」を深くから掬い上げて丁寧に扱った作品である点に起因する。外側に見えるミジ、ミレ、ホス、セジンらそれぞれの人の心の中にあるものが、次々と明るみになるさまは、さながら大きなマトリョーシカの中から小さな人形が次々と出てくるさまを連想させる。そのひとつひとつのマトリョーシカのようにミジ、ミレ、ホス、セジン、母たち、祖母の心の葛藤や苦しみが現れ、向き合う。その姿を見る私たちは、登場人物たちの誰かに共感し、共に苦しみ、彼、彼女らが成長の中で思いを昇華させるのを見て、カタルシスを感じる。『未知のソウル』というタイトルの『ソウル』は、都市の名前であると同時に、『魂』を表す『ソウル』なのではないかと思わされる。最後のマトリョーシカの中に入っているのはキラキラに光を放つ『ソウル=魂』なのだろう。まだ先の見えない“未知”、それはきっと明るく希望に満ちたものに変えることができる。そんな魂が望む生き方をしたい。ミジやミレと共に成長を続けていきたい。本作はまだ最終話までの途中経過にすぎないが、すでに名作の仲間入りを果たしている。素晴らしい脚本と演出が織りなす最高の作品だ。
参照
※ https://www.netflix.com/tudum/top10/tv-non-english
※ https://www.nielsenkorea.co.kr/tv_terrestrial_day.asp?menu=Tit_1&sub_menu=3_1&area=01&begin_date=202506
■配信情報
『未知のソウル』
Netflixにて配信中
出演:パク・ボヨン、パク・ジニョン、リュ・ギョンス
演出:パク・シヌ
脚本:イ・ガン
(写真はtvN公式サイトより)