『まどか26歳』が“ベイスターズ愛”に至った理由とは？　塩村Pがこだわった医師たちのリアル

世代間ギャップを描いていると言いつつ、結局人間の本質は変わらない

ーー本作は「令和のイマドキ研修医たちの成長ドラマ」で、まどかたちは働いていく中で仕事への向き合い方や覚悟が生まれていきます。近年は『不適切にもほどがある！』（TBS系）をはじめとして、令和と昭和のギャップを描く作品が大きな話題を集めています。塩村さんは、時代とともに変わっていく価値観や仕事感をどのように感じていますか？

塩村：すごく難しいテーマだと思うのですが、極端な話、“昭和のダメ親父”と言われている人たちも、自分が“昭和のダメ親父”だとは思っていないだろうなと。40代の私でも“イマドキ”というか、今を生きることで精一杯で、自分の中で主になっているのは自分の価値観でしかないという実感があります。ですが時代も変わり、20年ほど経ち、作品を作る上ではまどかの気持ちを主軸に考えるので、実際の若い子たちにリサーチしました。そこで「新人の頃ってこうだったよね」「上の人に接するときってこういう難しかったよね」など話していると、我々の世代も気づけば会話の中で目線が変わって、ダメ親父側の目線になっているんだなと気付かされました。

ーーリサーチをする中で、事前には想像できなかったこと、新たに発見したことはありましたか？

塩村：今回は特にリアルなお医者さんや研修医の方々と話をさせていただきました。劇中でも描いている「定時の17時で帰る」という働き方も実際にあるんです。ただ、もちろん全員がそうというわけではなく、残って勉強している方もいますし、萌ちゃんみたいに、自分がやりたいことや興味のある科にはめちゃくちゃ力を入れるけど、そうでない科は17時でドライに帰る方もいて。私の感覚では、研修医さんは満遍なく研修ローテーションを回して、それぞれ同じような力の入れ方になると思っていたので、それは実際に取材をさせていただいたからこそ知ることができた部分です。

ーー若者たちだけではなく、指導をする昭和世代の方々の葛藤も描いてるのが本作の魅力のひとつでした。

塩村：ありがとうございます。角田先生（木村多江）と西山先生（赤堀雅秋）がテラスで話しているシーンがありました。基本的に若者が主人公のドラマでは、若者から見た昭和のダメ親父世代が「全然わかってくれない」と書かれがちです。ですが、今回それだけで終わってはいけないと感じ、「親父たちも悩んでいるよ」というシーンを、第2話の最後に盛り込みました。

ーー印象的な一幕でした。

塩村：作りとしては、「イマドキ研修医とベテラン医師」という括りをキャッチーにしましたが、実際は両者が入り混じる時代が当然で、どちらも相手の気持ちがわかる部分もあれば、わからない部分もあるのです。価値観の変化は時代とともにあるものの、線を引くことはできず、グラデーションのようになっていると感じました。そして平成という時代があるわけですから、まどかたちも当然、親たちの世代、すなわち昭和のダメ親父的な人のことを想像はできるし、共感はできなくても理解はできるでしょう。一方で、自分たちの時代に重ね合わせて、若い頃はこういうところで怒っていたんだよね、という部分もあるのです。世代間ギャップを描いていると言いつつ、結局人間の本質は変わらないのでしょうね。

■放送情報
火曜ドラマ『まどか26歳、研修医やってます！』
TBS系にて、毎週火曜22:00～22:57放送
出演：芳根京子、鈴木伸之、髙橋ひかる、大西流星、吉村界人、小西桜子、渡邊圭祐、堀田茜、佐野弘樹、岩男海史、小松利昌、信川清順、板倉俊之（インパルス）、森カンナ、赤堀雅秋、溝端淳平、佐藤隆太、木村多江、奥田瑛二
声の出演：大塚明夫、大谷育江
原作：水谷緑『まどか26歳、研修医やってます！』『あたふた研修医やってます。』『離島で研修医やってきました。』（KADOKAWA刊）
脚本：前川洋一、船橋勧、松井香奈、村野玲子、原野吉弘
音楽：伊賀拓郎
主題歌：星野源「Eureka」（スピードスターレコーズ）
演出：井村太一、山本剛義、大内舞子
プロデュース：塩村香里、松本桂子
編成：武田梓
製作：TBSスパークル、TBS
©TBS
©Midori Mizutani／KADOKAWA
公式サイト：https://www.tbs.co.jp/madoka26_tbs/
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