『おむすび』「幸せにすることなんてできねぇ」 “一直線”だったからこそ出た翔也の言葉

 「俺の夢は、もう終わったんだ……」

 9月から始まり、いよいよ折り返し地点に差し掛かった『おむすび』(NHK総合)。年内最後の週となる第13週「幸せって何なん?」は、静かな幕開けとなった。

 プロ野球選手を目指す翔也(佐野勇斗)と、翔也を支えるために栄養士の資格を取った結(橋本環奈)。翔也が所属する星河電器の社員食堂に結が就職することになり、来年のドラフトで翔也のプロ入りが決まった暁には結婚する予定だった。
 
 ここまでは何もかもが順調……なはずだったのだ。だが、結は翔也から肩を壊してまともに球を投げられなくなったことを告げられる。翔也は以前から疑いのあった「肩関節唇損傷」に加えて、腱板も損傷していることが明らかになった。

 一時期はスランプに陥るも、“魔球”と呼ばれる変化球を習得したことでプロのスカウトも注目する選手となった翔也。巨人に入団した先輩の澤田(関口メンディー)に続いて、星河電器からプロが誕生するかもしれないと社員からも期待されていた。しかし、翔也の肩は手術しても元の状態まで回復する可能性は低く、監督から「肩をそれだけ壊したピッチャーを指名する球団はない」とはっきり告げられてしまう。それは翔也に無駄な期待をさせないための監督なりの優しさなのかもしれない。

 リハビリすれば、野球自体は続けられるかもしれないが、翔也の夢はあくまでもプロの選手になること。そのためのサクセスロードマップを作成し、甲子園に出るまでは結との交際も避けるほど、目標に一直線だった。結局、甲子園に出ることは叶わなかったが、道筋はいくらでも書き換えればいい。そう言っていた翔也だが、ゴールそのものがなくなってしまった今、進むべき道も分からなくなってしまった。

 翔也は「家族と今後のことを話す」と結に告げて栃木の実家に帰ったきり、しばらく連絡がつかなくなってしまう。その間、結は翔也のことを考えないように、休憩もまともに取らず仕事に没頭した。どうにか自分を保とうと笑顔で過ごす結の姿に胸が苦しくなる。翔也の夢は今や、1人だけのものではない。結が栄養士を目指したのは翔也を支えるためであり、翔也がプロの選手になるのは結にとっても悲願だった。だから、自分のことのようにショックを受けるのも無理はない。

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