デンゼル・ワシントンの極悪ぶりを堪能 『グラディエーターII』はパワフルな痛快娯楽活劇だ

 そして何はなくともデンゼル・ワシントンである。本作でルシアスの前には、何人もの敵が立ち塞がる。ドグサレ外道小物感が光るカラカラ&ゲタ帝も良いし、ルシアスの故郷を焼きながら、しかし人間として真っ当な心を持つアカシウス将軍(ペドロ・パスカル)も魅力的だが、野心を胸に暗躍するデンゼルのマクリヌスが非常に良い。『トレーニング デイ』(2001年)や『アメリカン・ギャングスター』(2007年)などで見せた、極悪デンゼルを存分に堪能できる。特に終盤に用意された無茶苦茶な演説シーンは忘れがたい。そりゃデンゼルにあんな“カマし”をされたら、背筋をピンと伸ばして立ち上がるしかないだろう。そして良くいえば権謀術数に長けた姿、悪くいえば小細工勝負のデンゼルが存在感を発揮するほどに、文字通り身ひとつで、正面から巨悪に立ち向かうルシアス役のポール・メスカルも輝く。堂々たる剣闘士っぷりは、胸がすくようだった。剣と筋肉、そしてド根性で巨悪に挑む剣闘士の姿は、観ていて単純にカッコいい。

 リドリー・スコット監督、御年86歳。そう、86歳なのである。人生100年時代とは言うが、それにしても86歳でこれを撮るかと驚くばかりだ。やや駆け足である点が悔やまれるが、本作は直球かつパワフルな痛快娯楽活劇である。

■公開情報
『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』
全国公開中
監督:リドリー・スコット
脚本:デヴィッド・スカルパ
キャラクター創造:デヴィッド・フランゾーニ
ストーリー:ピーター・クレイグ、デヴィッド・スカルパ
出演:ポール・メスカル、デンゼル・ワシントン、ペドロ・パスカル、コニー・ニールセン、ジョセフ・クイン、フレッド・ヘッキンジャー、リオル・ラズ、デレク・ジャコビ
配給:東和ピクチャーズ
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