麻生久美子が体現する“肝っ玉母ちゃん”像 『おむすび』で担うバランサーとしての役割

 愛子役を演じる麻生久美子は、意外にも本作が朝ドラ初出演。『MIU404』(TBS系)では女性初となる1機捜の隊長・桔梗ゆづる役を好演していたのが記憶に新しい。もちろん仕事のできるバリキャリながらも根性論が嫌いなリアリストで、馴れ合わないが相手のことを尊重し信頼する。その他者や部下との距離感、また自分自身への期待や信頼の寄せ方には、彼女なりの処世術、やそうならざるを得なかった苦労や見舞われた不可避だったのであろう理不尽が滲み出る。完全無欠ではない桔梗の人間臭さも彼女のそこはかとない魅力だ。

『MIU404』麻生久美子はワケあり4機捜の“頼れる母親”? 物語に厚みを加える稀有な存在感

綾野剛と星野源がW主演を務める金曜ドラマ『MIU404』(TBS系)で、女性初の機捜隊長を演じる、女優・麻生久美子。曲者だらけの…

 自立していて、それでいてとんでもない茶目っ気があるのは、『あのときキスしておけば』(テレビ朝日系)で演じた唯月巴役も同じだった。唯月は奇想天外なところがありつつも、人の本質を見抜く力に長けとても愛情深かった。

 『unknown』(テレビ朝日系)では、吸血鬼一家に育った主人公の母親で国民的キャスターという突拍子もない設定ながらも、なんだか甘美で余裕たっぷりの説得力のあるキャラクターを見事演じ上げていた麻生。夫の海造(吉田鋼太郎)へのツンデレ対応や夫婦の掛け合いはテンポが良く、娘の彼氏(田中圭)が抱える悩みにも軽やかに寄り添うわざとらしくない優しさも心地いい。

 麻生が演じる役どころは、周囲の意見や反応にも適切な距離感をとって客観的に対峙できるようなブレない自分軸が光る。そんなバックボーンが多くを語らずとも役柄から自然と染み出すお芝居は、押し付けがましさがなくいつだってさりげない。一大事が起きても必要以上に重々しく捉えたり悲観しない、意志を持って“楽観的”でいられる強さがある。

 本作でも、平穏無事に生きていくことを願っていた娘・結の世界がギャル集団や書道などとの出会いによって動き出そうとしているさまを温かく、しかし少し距離を保って見守っている。その距離感や温度感は視聴者が結を眼差す視線とも重なり、必要以上に手出ししたり助言しすぎず俯瞰で見届けようとする愛子の目線が1つの道標になっているように感じる。片や賑やかな高校生ワールドとずっと過去に縛られ続ける聖人という両極の要素が描かれる本作において、視聴者の安心感や安定感に繋がっているのかもしれない。

 結がハギャレンの皆とパラパラを披露しようとしている糸島フェスティバルの実行委員に聖人が抜擢されてしまいそうで、間もなく父親にギャルたちとの交流がバレてしまいそうだ。そんな時愛子はどんなふうに結の背中を押し、聖人の心配を吹き飛ばそうとするのだろうか。

■放送情報
連続テレビ小説『おむすび』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:橋本環奈、北村有起哉、佐野勇斗、麻生久美子、宮崎美子、田村芽実、みりちゃむ、岡本夏美、谷藤海咲、兒玉遥、酒井若菜
語り:リリー・フランキー
主題歌:B'z「イルミネーション」
脚本:根本ノンジ
制作統括:宇佐川隆史、真鍋斎
プロデューサー:管原浩
写真提供=NHK

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