染谷将太のカラオケシーンに嗚咽 『若き見知らぬ者たち』が“見知らぬ者”にしなかったもの

 警察のおぞましい醜悪さも含めて、本作を観て「さすがにこんな社会はありえない」と言いたくなる方は多いと思います。確かに、本作が“リアリティ”をもった映画だとは思いません。ただ、ここまでの理不尽と不幸を描いたのは、内山監督が現実にも「若き見知らぬ者」がいることを絶対に伝えるんだという強い思いがゆえだと感じました。

 中盤の展開まで絶望が続く本作ですが、最終幕の壮平のタイトルマッチシーンはまったく別の映画と言っていいほどの仕上がりになっています。とにかく、福山翔大さんのアクション(というか本当の試合)がすごすぎるの一言。このシーンもすごかったですが、個人的な本作の白眉は大和役の染谷将太さんによるカラオケシーン。『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)福ちゃんとしての「イケナイ太陽」も最高でしたが、本作でのカラオケシーンも圧巻です。福ちゃんの明るさとは真逆で、顔も映らずカメラが捉えるのは背中のみ。でも、その背中から友への思いと社会への怒りがにじみ出ており、私はこのシーンで涙しました。何を歌っているかは映画館で観て確かめてください。

 また、ここまで言及していなかったですが、彩人役の磯村勇斗さんの素晴らしさも言わずもがなです。まったく楽しい映画ではありませんが、何かと辛い2024年が終わる前に劇場での鑑賞をオススメします。

■公開情報
『若き見知らぬ者たち』
新宿ピカデリーほかにて全国公開中
出演:磯村勇斗、岸井ゆきの、福山翔大、染谷将太、伊島空、長井短、東龍之介、松田航輝、尾上寛之、カトウシンスケ、ファビオ・ハラダ、大鷹明良、滝藤賢一、豊原功補、霧島れいか
原案・脚本・監督:内山拓也
製作:小林敏之、宮前泰志、藤本款、Amel Lacombe、Sang Wook Kang、Catriona Chen、菊野浩樹、本間綾一郎、森田篤、東城祐司
企画・プロデュース:宮前泰志
共同プロデューサー:Amel Lacombe、本間綾一郎
プロデューサー:吉岡宏城、佐藤雅彦
企画・制作:カラーバード
制作プロダクション:エピスコープ
サウンドプロダクション:PANORANIME
企画協力:ハッチ
配給:クロックワークス
製作:The Young Strangers Film Partners
©2024 The Young Strangers Film Partners
公式サイト:youngstrangers.jp
公式X(旧Twitter):@youngstrangers
公式note:@youngstrangers

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