『海のはじまり』夏と海が選んだ家族の“形” 水季が残した“つながり”と“選択肢”

 時には立ち止まっても、大切なのは、その記憶とどう付き合っていくかを、自分で選ぶこと。それは、水季が海に最後に教えてあげた、生きていく上での一つの術ともいえるのかもしれない。

 最終回を迎えた今、このドラマがはじまる直前の生方のインタビューでの言葉を思い出す。

「伝えたいわけじゃないことは、『家族は素晴らしいもの』ということです。家族を嫌いだっていいと思っています。家族ではない“つながり”を持った登場人物たちの感情や選択が何より重要な作品だと思っています」(※)

 家族と聞くと、ある意味では選べないものにも思える。血のつながりは時にどうしようもなく濃い。でも、そうでない"つながり"を持つ人だって家族と呼べるはずだ。弥生(有村架純)が「私が楽しいかどうかは私が決めます」と昔の夏に言ったように、自分が誰と一緒にいるのが楽しいのか、一緒に生きていきたい人は決められる。弥生も、津野(池松壮亮)も、大和(木戸大聖)も夏のアパートに居合わせたのは、海と夏の力になりたいからなのだ。

 水季の手紙の中に書かれた「人は2人の人から生まれてきます。1人で生きてくなんて無理なんだよ」という言葉は、自分で選んだ人たちと支え合って生きていく、そんな関係性もまた、確かな“家族”なのだと思わせてくれる。血縁だけが家族じゃない。そして、「亡くなった人」もその人の記憶の中で生き続ける大切な家族なのだと。

 親になること、家族になること。それは「始まりは曖昧で、終わりはきっとない」。一瞬の出来事ではなく、日々の小さな選択や行動の積み重ねが、いつしか、かけがえのない関係を築いていく。私たちは皆、誰かとつながりながら生きている。それは血縁であっても、自ら選んだ絆であってもいい。その“形”は、誰かの愛に触れ、その愛に応えようとする瞬間から、少しずつ作られていくものなのかもしれない。

参照
※ https://gingerweb.jp/timeless/person/article/20240720-miku-ubukata-16

■配信情報
『海のはじまり』
TVer、FODにて配信中
出演:目黒蓮、有村架純、泉谷星奈、木戸大聖、古川琴音、池松壮亮、大竹しのぶほか
脚本:生方美久
演出:風間太樹、髙野舞、ジョン・ウンヒ
主題歌:back number「新しい恋人達に」(ユニバーサル シグマ)
プロデュース:村瀬健
音楽:得田真裕
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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