『夏目友人帳』『化け猫あんずちゃん』『ラーメン赤猫』 “猫”が2024年夏のアニメを席巻

 アニメにおける猫たちの魅力は、その自由奔放さだけにとどまらない。彼らは、私たちの心に深く刻まれた夏のノスタルジックな風景とも不思議とマッチするのだ。

 「子どもの頃の夏」という言葉から連想されるような、のどかな田舎で無邪気に過ごす情景。そんな風景に、猫の姿がすっと溶け込んでいく様子は、どこか懐かしさを感じさせられる(田舎に祖父や祖母がいたわけではない筆者ですら、不思議とそう思わせられるほどに)。風鈴の鳴る縁側で丸くなる猫と、たそがれる人間。あくまで刷り込みのようなイメージではあるものの、やはりそうした画作りの意味でも猫の存在感は大きい。『夏目友人帳』は特に、少し切ない気持ちになるようなストーリーに加え、こうした夏の心象風景を強く思い起こさせる作品でもある。

 最後に、これらの作品に共通するのは、猫を通して描かれる「つながり」の大切さだ。猫たちは、人と人とのつながりを自然な形で媒介し、物語に温かみをもたらしている。ひと夏ならではの家族との絆、新しい友達との出会い、見知らぬ土地での心温まる交流。それぞれの物語で猫たちがそれらを優しく包み込む。猫の存在は、人々の心の距離を縮め、新たな関係性を築くきっかけとなるのだ。

 猫たちは、現実世界からアニメの中まで、私たちの生活のあらゆる場面に息づいている。その魅力に取り憑かれた人々が増え続ける中、「猫の時代」は今後も続いていくのだろうか。

■公開情報
『化け猫あんずちゃん』
全国公開中
監督:久野遥子、山下敦弘
原作:いましろたかし『化け猫あんずちゃん』(講談社KCデラックス刊)
キャスト(声・動き):森山未來、五藤希愛、青木崇高、市川実和子、鈴木慶一、水澤紳吾、吉岡睦雄、澤部渡、宇野祥平
制作:シンエイ動画×Miyu Productions
脚本:いまおかしんじ
音楽:鈴木慶一
編集:小島俊彦
キャラクターデザイン:久野遥子
作画監督:石舘波子、中内友紀恵
美術監督・色彩設計:Julien De Man
コンポジット開発:Guillaume Cassuto
撮影監督:牧野真人
CG監督:飯塚智香
音響監督:滝野ますみ
実写撮影協力:マッチポイント
撮影:池内義浩
録音:弥栄裕樹
スタイリスト:伊賀大介
主題歌:佐藤千亜妃「またたび」(A.S.A.B)
プロデューサー:近藤慶一、Emmanuel-Alain Raynal、Pierre Baussaron、根岸洋之
製作:化け猫あんずちゃん製作委員会
配給:TOHO NEXT
©️いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会
公式サイト:ghostcat-anzu.jp
公式X(旧Twitter):@ghostcat_anzu

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