『ねこのガーフィールド』はカートゥン世代にこそ刺さる “らしさ”が詰まった伏線回収劇

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、幼少期にカートゥン・ネットワークとディズニーチャンネルを観て育った佐藤が『ねこのガーフィールド 』をプッシュします。

『ねこのガーフィールド』

 アメリカ国民の誰もが知る、世界一有名な“オレンジキャット”ことガーフィールド。毎日最低2時間はカートゥン・ネットワークに張り付いていた私にとって、ガーフィールドとの再会は実に約15年振りとなった。カートゥンらしさが詰まったブラックジョークやガーフィールドの皮肉っぷり。そして時には、子供には伝わらない大人向けの高度な笑いも混ぜ込んでくるあの感じ……。しかし、この作品の面白さは単なるカートゥン世代に向けたノスタルジーな部分だけに収まらない。舞台がアップデートされたことで、ガーフィールドというキャラクターに現代的な要素が加わり、新旧ファンどちらも楽しめる内容となっているのだ。

 本作のストーリーは、“幸せ太り”な毎日を送ってきた家ねこのガーフィールドが、突然、思わぬ形で生き別れた父さんねこのヴィックと再会したことから大きく展開していく。前半で描かれる日常のシーンでは、飼い主・ジョンのスマホを使いこなし、ウーバーでごはんを頼みまくったり、大量のポップコーンと共に配信サービス「CAT FLIX」で動画をダラダラと観ていたりと、ネットを駆使したガーフィールドの怠惰さが描かれているのが面白い。また、ここでは詳しく言及しないでおくが、クライマックスの“とあるネタ”に向けて、食いしん坊なガーフィールドらしい伏線の張り方が前半にちりばめられている。

 そんな平和な毎日を過ごしていたガーフィールドだったが、「悪いねこに追われているんだ。助けてくれ!」と懇願するヴィックに力を貸すため、しぶしぶながら家から飛び出すことに。さらには、親子の絆が試される「ミルク泥棒大作戦」に巻き込まれていくなど、初めての外の世界で数々の予期せぬ困難に直面していくガーフィールドの新鮮な姿が良かった。

 思えば、『ガーフィールド』という作品において、彼の出生や親にまつわる話は深く言及されてこなかった。ガーフィールドが子猫の時に「すぐに戻る」と言ったまま、元の場所に帰って来なかったヴィック。お腹を空かせたガーフィールドの前に現れたのが、現飼い主であるジョンだったのだ。本作の大きなテーマは、「父と息子の和解」となっているが、観客に“育て親”である飼い主・ジョンの存在を常に意識させているのも興味深い。ガーフィールドとジョンの間には共通言語がなく、言葉のいらない固い絆で結ばれているのに対し、ガーフィールドとヴィックは、言葉が通じ合うからこその“気まずさ”が表現されているのだ。

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