『海のはじまり』水季が海を産むことを決意した理由 池松壮亮が見せた言葉にできない感情

 海がまだ0歳のころから水季が働いていたという事実を知った夏は、さらに水季について知りたいという思いを強くする。夏は、病気のことについて朱音たちに直接聞くのをためらい、津野に話を聞こうと決意。

 しかし、水季の最期について尋ねられた津野は「思い出したくないです」ときっぱりと断る。それでも諦めず「知りたい」という気持ちを強く持ち続ける夏に、「月岡さんより、僕の方が悲しい自信があります」と津野。その言葉には、水季との深い絆と喪失感が滲み出ていた。プロデューサーの村瀬健も「池松壮亮さんにしかできない表情。津野が抱えている言葉にできない感情のすべてが込められていたと思います。素晴らしすぎて言葉がないです。圧巻です」とこのシーンを絶賛しており、第6話のテーマを印象付ける大きな見せ場となっていた。

 津野が夏の編んだ海の三つ編みをほどく瞬間、夏の努力の跡が消されていくようで、胸が締め付けられる。しかし、「夏くんのおかげでふわふわになった!」と無邪気に喜ぶ海の姿に、思わず安堵の表情を浮かべた表情を浮かべた視聴者も多かったのではないか。

 津野には津野なりの、そして夏には夏の、水季との思い出に根ざした深い悲しみがある。そこに優劣は決して存在しない。しかし、今後の展開の中で、夏が何も知らずに過ごしてきた時間に、津野の心の中に培われてきたものを知ると、物語の見え方が少し変わってくるのだろう。

 さらに第6話では、水季が海を産むことを決意した理由が明らかになる。朱音に「何かあって産むことにしたの?」と問われた際、水季は「神様のお告げ」と軽い調子で返答していた。しかし実際には、彼女の決断の背景には、過去に弥生が病院のノートに残した言葉があった。7年前、2人は「病院の意見ノート」を通じて“出会って”いたのである。

 弥生の記した「どちらを選択しても、それはあなたの幸せのためです。あなたの幸せを願います」という言葉に、水季は深く心を動かされ、涙を流しながら海を産む決意をした。弥生が知らず知らずのうちに、水季と海の出会いの運命を導いていていたのだ。水季の残した足跡を辿る中で見えた“海のはじまり”に、すでに折り返しを迎えた本作の真髄を見た気がした。

■放送情報
『海のはじまり』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:目黒蓮、有村架純、泉谷星奈、木戸大聖、古川琴音、池松壮亮、大竹しのぶほか
脚本:生方美久
演出:風間太樹、髙野舞、ジョン・ウンヒ
主題歌:back number「新しい恋人達に」(ユニバーサル シグマ)
プロデュース:村瀬健
音楽:得田真裕
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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