『虎に翼』現在と地続きの差別問題に切り込む第18週 堺小春演じる小野の“橋渡し”が鍵に

 差別に異議を唱える寅子に、「いいやつらもいれば、どうしようもないやつも多い」と反論する入倉。だが、寅子が言うようにそれは、日本人にも言えることで国に限定されたことではない。

 寅子たちがいる時代から100年近くが経った今も、この問題が他人事ではない現実を私たちは生きている。つい最近も、SNSで奈良公園にいる鹿を蹴る男性の動画が確証もないのに中国人と断定された状態で拡散されたり、「中国人・韓国人お断りします」とドアに書いた飲食店が物議を醸していた。実際にその国の人に迷惑を被った人もいるのかもしれない。けれど、だからといって他の人も同じはずだと決めつけ、不当に扱うことは差別に他ならない。私たちも顕洙に容疑がかかった放火事件を通し、この問題を寅子と一緒に考えていく必要がある。

 初公判では、弟の広洙が傍聴席から顕洙の無実を訴えた。あわや退廷させられそうになったところ、同じく傍聴席にいた三条支部の事務員・小野(堺小春)が朝鮮語で広洙をなだめる。小野といえば、物静かな女性で寅子が三条支部に赴任してからほとんど口を開いていない。表情も豊かな方ではないが、広洙をなだめる時の顔は切実だった。そんな小野には、婚約が破棄になった過去があるという。彼女が傍聴席に座った理由はその過去に関係しているのだろうか。

 美佐江(片岡凛)が何らかの形で関与していると見られる連続ひったくり事件に続き、刑事事件の難しさに直面している寅子。周囲の人にも事件の関係者にも、一人ひとりの人生に思いを馳せ、何でも首を突っ込もうとしてしまう彼女は常に誰かとの衝突が避けられないが、航一は「佐田さんはそれでいいんです」と言ってくれる。寅子にしかできないことがある。人によっては暑苦しく感じられる寅子の正義感に救われる人間もきっといるはずだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、岡田将生、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、戸塚純貴、岩田剛典、田中真弓、羽瀬川なぎ、田口浩正、遠山俊也、望月歩、堺小春、田中美央、竹澤咲子、名村辰、松川尚瑠輝、岡部ひろき、高橋克実
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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