『虎に翼』羽瀬川なぎが体現する“空白の14年間” 涼子の元付き人・玉役で“翼”を得るか

 放送中の朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)は、まったく飽きのこないドラマである。ヒロイン・寅子(伊藤沙莉)が成長していくように彼女の周りの者たちも同様に変化し続け、一人ひとりのエピソードが絶妙に絡み合うことで、本作は面的で豊かな作品となっているのだ。

 第17週「女の情に蛇が住む?」では、長く疎遠になっていた人たちが再登場。そのうちのひとりが、寅子の学生時代の友人でもある玉だ。演じているのは羽瀬川なぎである。

 この玉とは、寅子が法律の基礎を学んだ明律大学の学友である桜川涼子(桜井ユキ)の元付き人。学生ではなかったが涼子の付き添いで大学に出入りしていたため、玉も寅子たちと親しい間柄だ。終戦後の華族制度の廃止により涼子は特別な身分を失ったが、玉はいまでも彼女のことを「お嬢様」と呼んでいる。変わらず涼子のことを敬愛しているようだが、以前とはだいぶ関係性が異なるらしい。

 ふたりはいま新潟にて、昼間は「Tea Room Lighthouse」という喫茶店を営み、夜は高校生たち向けに塾を開いている。かつての涼子にとって玉はなくてはならない存在だったが、現在は玉にとって涼子がなくてはならない存在らしい。玉は空襲により負傷し、車椅子での生活を余儀なくされているのだ。

 山田よね(土居志央梨)と轟太一(戸塚純貴)、梅子(平岩紙)、崔香淑 /汐見香子(ハ・ヨンス)と、かつての仲間たちとの再会が続いてきただけに涼子も再登場するはずだとは思っていたが、なかなかに予想外の展開だともいえるのではないだろうか。そう、玉も一緒だとは思わなかったのだ。

 いや、あの頃のふたりの関係性から考えると、いまも一緒にいることに不思議はない。しかし、玉を演じる羽瀬川はレギュラーでの出演をしていたわけではなかった。涼子が登場する際にしばしば側に控えていた、というのが正直な印象だ。戦争により日常を剥奪されたふたりの関係性が変わったのは自然な流れなのだろう。しかし、いまこうして玉の存在にスポットを当てていることに、羽瀬川なぎという俳優に対する製作陣の期待の大きさが感じられるのだ。つまり、『虎に翼』における“玉=羽瀬川なぎ”のポジションが、以前とは大きく変わっているのである。

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