『虎に翼』桜井ユキ&羽瀬川なぎ再登場の喜び 吉田恵里香の描く人間の奥深さに驚くばかり

 娘の優未(竹澤咲子)とともに東京を離れ、新潟で母として裁判官としての土台作りに励む寅子(伊藤沙莉)。三条支部の職員とも少し打ち解け、ようやく新しい土地に慣れてきた頃、寅子は毎週水曜日に新潟地家裁本庁の刑事事件を担うことになった。そんな中、航一(岡田将生)が紹介してくれた喫茶店で懐かしい顔ぶれに出会う。

 「灯台」という意味を持つ喫茶ライトハウスは、寅子の明律大学女子部の同期・涼子(桜井ユキ)とそのお付き・玉(羽瀬川なぎ)が経営する店だった。寅子と涼子の笑顔と涙こぼれる再会から幕を開けた『虎に翼』(NHK総合)第17週。2人が顔を合わせるのは、涼子が父親の失踪に伴い、高等試験を辞退した時以来約14年ぶりだ。

 元華族のお嬢様でファッションが雑誌に取り上げられるほど有名人だった涼子は、いつも華やかな着物を身に纏っていた。今はシンプルなエプロン姿だが、凛とした佇まいや丁寧な言葉遣いは変わらない。よね(土居志央梨)や香淑(ハ・ヨンス)の近況を伝えると、「皆様のご無事と幸せをずっとお祈りしておりましたの」と目に涙を溜める涼子。思いやりに溢れた人柄もあの頃のまま。

 いつも自分のことよりも他人のことを優先するため、母親を見捨てられず、家を守るために結婚という道を選んだ。そんな彼女はあれからどうしていたのか。深い事情はわからないが、新潟の土地に流れ着き、空襲による怪我で車椅子生活となった玉とともに喫茶を営んでいる。さらに玉はお店で、東京の大学や国立大学を目指す学生たちに英語を教える塾を開いていた。その中には、山の境界線をめぐる民事調停で関わった森口(俵木藤汰)の娘・美佐江(片岡凜)の姿も。

 女子部時代から涼子の影響で英語を熱心に勉強していた玉。流暢な発音から、再会するまでの間も彼女がずっと努力してきたことが伝わってくる。その姿を見て、2人が何か苦労しているのではないかと心配していた寅子も安心するのだった。日本国憲法第14条2項「華族その他の貴族の制度は、これを認めない」。戦後、華族制度が解体されたことで、すべて国民は法の下に平等となった。涼子と玉の間にあった主従関係もなくなり、今は同じ立場で手と手を取り合って生きている。

 だが、気になるのは玉の表情だ。寅子に対して気丈に振る舞う涼子の隣で、玉は居心地が悪そうにしている。かつては涼子の後ろで傘を差していた玉。けれど、今は涼子が後ろから玉の車椅子を押している。そのことに少なからず、玉は申し訳なさを感じているのではないだろうか。

関連記事