『降り積もれ孤独な死よ』成田凌が犯人? 有力容疑者の退場で覆されるミステリーの定石

 『降り積もれ孤独な死よ』(読売テレビ・日本テレビ系)第3話は、ミステリーの定石を覆す大胆な手法が目を引いた。

 灰川十三(小日向文世)が留置場で自殺した。13人の遺体が見つかった事件の容疑者として勾留中だった灰川は、「子どもたちは全員俺が殺した」と言い残したまま独房で首をくくった。灰川邸事件は容疑者死亡のまま書類送検され、捜査は幕引きとなった。

 殺人現場に残された紋様は灰川と子どもたちが「リッカのマーク」と呼ぶもので、いわば家族の証といえるものだった。花音(吉川愛)は自分を階段から突き落としたのは灰川邸事件の犯人であり、冴木(成田凌)も生き残った子どもたちの中に犯人がいると考える。花音を含む6人の中で唯一アリバイがないのは、冴木の異母弟である蒼佑(萩原利久)だった。

 これらとは別に、灰川邸事件と並行して管内で連続傷害事件が発生していた。被害者はいずれも児童虐待の加害者男性だった。灰川邸では虐待されていた子どもたちが疑似家族として共同生活を送っており、二つの事件は虐待という接点でつながっていた。

 まさかそのつながりが主人公自身によって担われていたとは……。五味(黒木メイサ)に呼び出された冴木は、傷害事件に関わった証拠を突き付けられる。「子どもを虐待する男に強い憎しみ」を抱く冴木は、自身の暴力衝動を抑えきれず私的な制裁を加えていたのだ。7年後の現在、なぜ冴木が刑事をやめて警備員をしているかわかった気がした。五味は冴木に、黙っている代わりに自らの手で始末をつけるように伝えた。

 ミステリーのルールに「探偵自身が犯人であってはならない」がある。あくまで基本原則で例外もあるが、ドラマでいえば、事件解決ものでは主人公が犯人ではないことが前提となる。冴木が傷害事件の犯人であることは、部分的にこのルールを逸脱する。他方で『降り積もれ孤独な死よ』は、13人の子どもたちがなくなった灰川邸事件の真相解明が主であり、サブエピソード的な扱いの連続傷害事件は主人公の傷と暗黒面を示すものと考えれば、定石を踏み外していないとの説明も可能だ。

関連記事