有村架純が体現してきた“ヒロイン像” 『海のはじまり』弥生が背負う過酷な運命

 弥生を“不幸なヒロイン”や“悲劇のヒロイン”として語ることには抵抗があるが、過酷な状況に置かれているのは事実。思い返せば有村は、この系譜に連なるものともいえる役どころを数多く務めてきた。

 直近だと大河ドラマ『どうする家康』(2023年/NHK総合)で演じた瀬名/築山殿がそうだし、目黒と恋人関係を演じた『月の満ち欠け』(2022年)の正木瑠璃もそう。年内に世界配信が予定されている『さよならのつづき』(Netflix)では、プロポーズされた日に事故で恋人を亡くし、その恋人の心臓を提供された相手と恋に落ちるという役どころを演じているらしい。さかのぼってみれば、『るろうに剣心最終章 The Final/The Beginning』で演じた雪代巴なんて、過酷な運命を生きるヒロインの極地に到達している存在だった。思い出しただけで胸が張り裂けそうだ。

 しかし、これらの作品で有村が演じてきたのは、いずれも強い主体性を持ったキャラクターだった。たしかにみんな、“不幸”な“悲劇”のヒロインかもしれない。けれども自らの置かれた状況を嘆いてばかりの者はひとりもいなかった。過ぎてしまったことは過去のこととして受け入れ、どうにか未来に目を向けようとするーーこれが俳優・有村架純が体現するヒロイン像である。

 『海のはじまり』は「重い」と話題だ。一番やりきれない立場にあるのはヒロインの百瀬弥生である。夏の中で鮮やかによみがえった水季という存在に、おそらく弥生は太刀打ちできないだろう。その相手はもうこの世にいないのだし、思い出には敵わない。だが、弥生は前を見ようとしている。夏と海と関わることは、水季と手を取り合うことでもある。

 その力量や経験値ではなく、有村架純という俳優がこの役を演じる真の意味に、いずれ出会えるはずだと信じたい。

■放送情報
『海のはじまり』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:目黒蓮、有村架純、泉谷星奈、木戸大聖、古川琴音、池池松壮亮、大竹しのぶほか
脚本:生方美久
演出:風間太樹、髙野舞、ジョン・ウンヒ
主題歌:back number「新しい恋人達に」(ユニバーサル シグマ)
プロデュース:村瀬健
音楽:得田真裕
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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