『虎に翼』寅子の琴線に触れた航一の言葉 “司法の独立”を目指して奮闘は続く

 『虎に翼』(NHK総合)第79話で、寅子(伊藤沙莉)はずっと抱えていた気持ちの正体を知ることになった。

 前話で航一(岡田将生)に「夕べ泣きましたか?」と聞かれた寅子。訪ねてきた次郎(田口浩正)と3人の会話で、書記官の高瀬(望月歩)が話題に上る。地主の森口(俵木藤汰)につかみかかった高瀬について、航一は「思い出にできるほど、お兄さんの死を受け入れられていなかったのでしょうね」と言い、「死を知るのと受け入れるのとは違う。事実に蓋をしなければ生きていけない人もいます」と胸中を推しはかった。

「自分の話をされているようでした」

 優未(竹澤咲子)との関係に悩む寅子に、航一の言葉は響いた。優三(仲野太賀)がどんな人か優未に聞かれても、寅子はうまく答えることができない。寅子は、優三の死を受け入れたつもりだったが、実は受け入れられていなかった。「話したくはないけど、話せるようにはなりたい」と言う寅子を、航一は独特の言いまわしで励ました。

 娘との間に開いてしまった距離を自分から埋めに行く寅子を、航一は「とんでもなく諦めが悪い」と評する。「なるほど」が口癖で「どちらかと言うと溝を自ら作りに行くたち」の航一からすれば、傷つきながらも手を伸ばそうともがく寅子は、驚嘆すべき存在に映ったかもしれない。父の朋彦(平田満)をなくした自身の心境と重なる部分もあっただろう。猪突猛進な寅子のあり方を俯瞰しつつ、さりげなく寄り添う航一なりの優しさが伝わってきた。

 仕事を休んだ高瀬を寅子は叱らなかった。「謝りませんよ」と強情を張る高瀬に、寅子は先に頭を下げた。それは、第78話冒頭で高瀬から「波風を立てないでほしい」と言われたことへの返答でもあった。「私、この先もきっと波風を立ててしまう」「上司として、人としてできることをしたい」。スーツに買い物かごを提げた寅子は、関わることをやめないと宣言しているようだった。それは高瀬や優未に対してもだ。

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