『虎に翼』全てが自分本位の寅子が“失ったもの” 上辺の関係となってしまった猪爪家

 そんな上辺だけの家族関係となってしまった猪爪家の異変を察知するのが、久々の登場となる記者・竹中(高橋努)だ。寅子の特集を雑誌で組みたいと猪爪家に取材にやってきた竹中は、寅子が普段を料理をしていないことを瞬時に見破り、よそ行きの笑顔で寅子を敬ってばかりの家族に、竹中は「ご苦労さんでした。ははははは」と苦笑するばかり。竹中と家を後にする寅子を見送った後、炊事場に残されたロールキャベツを作った後の汚れた調理器具を見つめる花江からは諦めと鬱憤が感じ取れる。

 それでも家族としての形が保たれているのは、寅子が猪爪家の大黒柱として稼ぐ立場にあるから。「お金は私が十分、家に入れてるんだから」という寅子の言葉からは、だから家のことは花江に任せているとも取れ、その思いは先述したアメリカ土産にも滲み出ている。

 竹もとで行われた、女性司法修習生たちとの対談。取材終わりに、寅子は修習生に「いい時代になったわ。私たちの時代には法律を勉強することすら、許されなかったんだもの。あなたたちは恵まれてるんだから頑張らないとね」と声をかける。今の寅子に欠落しているのは、相手の立場になって物事を考えられないこと。全ては自分目線で、自分語り。それはお土産にも、家族への接し方にも如実に表れている。すっかり鼻高々な寅子の変貌を、花江や竹中だけでなく、梅子(平岩紙)も気づいていた。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、森田望智、高橋努、平埜生成、三山凌輝、名村辰、松川尚瑠輝、美山加恋、中村無何有、矢島健一、沢村一樹、滝藤賢一、松山ケンイチ
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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