エディ・マーフィの魅力健在! 『ビバリーヒルズ・コップ:アクセル・フォーリー』の痛快さ
その一方で、還暦を迎えた“今のエディ”の魅力も今回は感じ取れる。それはエディの演技力だ。今回の映画は事件捜査と並行して、アクセルとジェーンの関係の修復も物語の縦軸として進行していく。こちらでは演技派としてのエディが楽しめる。ふとした瞬間に見せる寂しげな表情や、真剣なまなざしは、若い頃のギラギラ&チャラチャラのエディにはなかったものだ。『ドリームガールズ』(2006年)や『ルディ・レイ・ムーア』(2019年)などの非コメディ作品を通過した、現在のエディだからこそ出せる味である。
口先一つで困難を次々と解決していくエディの姿は痛快である。マ・ドンソクやドウェイン・ジョンソンが人を殴りながら事件を解決していくように、エディはハッタリで戦う。これは私の唱えている説なのだが、優れたアクション映画とは、観たあとに強くなった気がしたり、体を鍛えたくなるものだ。前述のマ・ドンソクの映画を観たあとは、自分も拳で人をブッ飛ばせそうな気がしてくる。本作を観ていると、会員制のバーや悪党の縄張りでも、堂々とハッタリをかませば正面から入れるような気がしてくるし、明日から何か失敗したら早口で誤魔化せば何とかなると思えてくる。そういう「夢」が観れる映画だ。そして最後のオマケのシーンにおける不良中年っぷりもチャーミングだ。思わず笑顔になってしまうことだろう。決して「人生を変える1本」や「大傑作!」ではないが、お茶の間で気楽に楽しみたい1本である。
■配信情報
Netflix映画『ビバリーヒルズ・コップ:アクセル・フォーリー』
Netflixにて独占配信中
Melinda Sue Gordon/Netflix © 2024