『忘却バッテリー』はこれまでの野球アニメと何が違う? 宮野真守が強調した“緩急”

宮野真守の振り切った演技の凄さ

 そして『忘却バッテリー』のもうひとつの魅力がギャグとシリアスのスイッチングだ。そのギャグの大半を担うのがチームメイトからも「アホ」と言われる記憶を失った要である。記憶を失っていると言っても悲壮感が一切ない。しょうもないギャグを繰り出し、思春期丸出しの姿に山田がツッコミ、藤堂と千早が笑い転げるというなんとも男子高校生の日常で和む。

 このギャグの繰り出されるスピードとツッコミの間が絶妙で、アニメならではのキレのある動きと声優陣の演技の賜物と言えるだろう。

 要を演じているのは宮野真守、ツッコむ山田を演じるのが梶裕貴というのがまたいい。共演経験が多い2人のボケとツッコミにはなんとも安心感がある。要を宮野が演じると発表された時点から話題を呼んでいたが、改めて、本作では存分に宮野真守の凄さを堪能できた。

TVアニメ『忘却バッテリー』#09「誰に向かって口きいてんだ」次回予告|毎週火曜深夜24時よりテレ東系列にて放送中!

 そして第9話・第10話では記憶を取り戻し、智将としての要が登場するわけだが、作中のセリフでも言われているように、これがまた「二次元のカッコよさ」である。

 「生きた球には勝てないよな」とバッティングセンターが苦手な理由をいいながらも、ガンガンに球を打ち返し、練習試合で緊張する山田に「俺と同じチームで緊張しちゃった?」と微笑む。ここまでのアホの積み重ねがあるので智将パートがめちゃくちゃに引き立つ。カッコいいことを言っているのに、おもしろくなってしまうのはどうしたものか。スンッとした智将モードの要に千早と藤堂が「あの顔腹立つな」と言うが、良い意味で同意したくなる。これはまさに宮野真守の振り切った演技があるからだと言えるだろう。

ギャグに振り切るからこそ引き立つ野球のシリアスさ

 一方で野球に関する描写はしっかりとリアルで、それぞれの選手が抱える悩みもシリアスだ。打ち込んできたものだからこそ、ぶつかった壁の大きさは中学生や高校生が乗り越えるにはより厳しいものに感じるだろう。

 その悩みをぶち破るのは、むしろ深刻になりすぎないこと。考えれば考えるほど、悩みはドツボにハマる。要のアホさは、ある種さまざまな人の悩みを打ち破るきっかけになるのかもしれない。

■放送情報
TVアニメ『忘却バッテリー』
テレ東系にて、毎週火曜24:00〜放送
リピート:毎週火曜8:00〜/毎週木曜14:00〜
※放送日時は予告なく変更になる場合あり
Prime Video にて、放送直後より毎週火曜配信
各種配信サービスにて、毎週水曜24:30より順次配信
※配信開始日はサービスによって変動する場合あり
原作:みかわ絵子(集英社『少年ジャンプ+』連載)
試合制作:高嶋栄充
監督:中園真登
キャスト:増田俊樹(清峰葉流火役)、宮野真守(要圭役)、阿座上洋平(藤堂葵役)、島﨑信長(千早瞬平役)、梶裕貴(山田太郎役)、山谷祥生(土屋和季役)、大塚剛央(国都英一郎役)、石井マーク(巻田広伸役)、河西健吾(桐島秋斗役)
シリーズ構成:横手美智子
副監督:飯田剛士
キャラクターデザイン:長谷川ひとみ
アクション作画監督:立中順平、徳丸昌大
美術監督:船隠雄貴
色彩設計:中野尚美
撮影監督:川下裕樹
3DCG監督:小川耕平
編集:吉武将人
音楽:菊谷知樹、山崎寛子
音響監督:名倉靖
音響効果:長谷川卓也
制作:MAPPA
オープニング・テーマ:Mrs. GREEN APPLE「ライラック」
エンディング・テーマ:マカロニえんぴつ「忘レナ唄」
©みかわ絵子/集英社・KADOKAWA・MAPPA
公式サイト:boukyaku-battery.com
公式X(旧Twitter):@boukyakubattery

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