『東京タワー』詩史の孤独と重なる“東京の象徴” 感情剥き出しの透が変化をもたらす
“世界で一番悲しい景色”が引き合わせた2人が、ついにそれを「綺麗」だと認めた『東京タワー』(テレビ朝日系)第8話。
東京の象徴として、見る人に様々な思い出を想起させる東京タワー。それはある意味、それぞれから“見たいように”自身の想いを投影し消費される都合の良い存在とも言える。その高さやスケールに皆は感嘆の声を漏らすも、実のところその中身が何を考えているかなんて誰も知ろうとしてはくれない。自身はたった一人ポツンと高いところから周囲を照らし続けている。もしかすると、若くから建築家として注目を浴び賞賛される詩史(板谷由夏)からすれば、なんだかそれは自身の孤独と重なるところがあるのかもしれない。
ならばいっそ誰にも本心を打ち明けまいと、どこにも依存せずに立ち続ける詩史にとって、最初は綻び一つない夫婦でいることを周囲に見せつけるかのような節のある英雄(甲本雅裕)は、夫として最適解だったのだろう。妻が“自立した女性”であることを尊重してくれる英雄は、自分の全てを明け渡さなくともそつなく夫婦関係を継続できる。「1人で夕食を食べなくて済む」し、1人でいなくて済む。しかしその実、夫婦をしながらも詩史はずっとずっと1人だったのかもしれない。見かけ上1人ではなくても、心はどこにも誰にも属さず自由。そんな夫婦の距離感がちょうど良かったのが、透(永瀬廉/King & Prince)が登場してその誤魔化し続けてきた虚しさと対峙せざるを得なくなってしまったのかもしれない。
透からの「会いたい」という誘いを断り、英雄と向き合ったディナーの席で詩史は完全に上の空で心ここにあらず。透と妻の関係性に気付いていながらも、敢えてそれに言及することも白日の下に晒すこともせずに“生殺し”状態で2人を泳がせ続けていた英雄も、これには一気に焦りを滲ませる。透の母親・陽子(YOU)に2人の関係を暴露した際の英雄もまた、今まで見たことのないほど追い込まれた表情をしていた。
自分と同じくそつなく夫婦をこなすことにメリットを見出していたであろう詩史が、ついにその冷静さを欠き、取り繕えなくなっている。自分には絶対に乱せぬ彼女のペースを別の人間が掻き乱し、確実にその人が彼女の心に棲んでいる。それを突きつけられ、英雄もどうやらこれは只事ではないと動き始めた。あんなに切羽詰まった表情を見せる詩史は初めてで、今は夕食を1人で食べなくても済むという結婚によってもたらされたメリットが、彼女にとって大きな足枷となっているようだ。