『9ボーダー』松下洸平が見事に演じ分けた“2つの人物” コウタロウにまつわる伏線が回収

『9ボーダー』松下洸平の演じ分けが見事

 そして第8話では、コウタロウの記憶喪失の理由が、都市開発プロジェクトをめぐり、自治会長との対立が激化した末の事故だったことが明らかになる。議論の最中、コウタロウは階段から転落してしまう。雪の中、意識を失って倒れている彼を助けたのが、あつ子だった。

 第8話では松下洸平の演技が、芝田悠斗とコウタロウという2つの人物を見事に演じ分けている。キリッとしたスーツ姿で、街をよくしたい一心で都市開発プロジェクトに情熱を注ぐ芝田悠斗。その真摯な眼差しと凛とした佇まいは、彼の仕事に対する真面目さと責任感を物語っている。一方、記憶を失ったコウタロウの優しさと純真さは、松下洸平の柔らかな表情と温かみのある言葉によって巧みに表現されている。2つの人物像の対比は、第8話の大きなキーポイントとなった。

 しかし彼の演技は、単に2つの役を演じ分けるだけではない。芝田悠斗の中にも、コウタロウの中にも、彼らに共通する“人間性の本質”を見出し、それを表現しているのだ。だからこそ、私たちは芝田悠斗とコウタロウに、まるで別人でありながらも、どこか通じ合うものを感じることができるのかもしれない。自分を追い詰めた自治会長すらも許すコウタロウの心の広さこそが、過去にも現在にも通じる彼の本質だったのだろう。

 コウタロウがおおば湯にたどり着き、七苗と出会ったのは偶然ではないのかもしれない。地域の人々に愛される銭湯で、彼は新しい人生を始める機会を与えられたのだ。街を変える立場として乗り込んできたこの街で、皮肉にも大切な人々との絆を育み、自分の居場所を見つけられたのだから。記憶を失ったからこそ、コウタロウとして生きる自由を手に入れた芝田悠斗もまた、3姉妹と同じく“幸せ”の呪縛に悩んでいた人だったに違いない。神戸に戻った彼は、どんな未来を幸せとして想像するのだろうか。

■放送情報
金曜ドラマ『9ボーダー』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:川口春奈、木南晴夏、畑芽育、井之脇海、木戸大聖、山中聡、伊藤俊介(オズワルド)、内田慈、岩谷健司、箭内夢菜、奥村佳恵、矢崎広、兵頭功海、YOU、松下洸平
脚本:金子ありさ
プロデュース:新井順子
協力プロデュース:阿部愛沙美
演出:ふくだももこ、坂上卓哉
音楽:jizue
主題歌:SEKAI NO OWARI「Romantic」(ユニバーサル ミュージック)
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/9border_tbs/
公式X(旧Twitter):@9border_tbs
公式Instagram:9border_tbs
公式TikTok:@9border_tbs

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