『ガールズバンドクライ』に反映された“川崎の特性” 舞台選びの妙が引き出す作品の魅力

 この春から放送されている『ガールズバンドクライ』は川崎駅周辺を舞台にしているが、これほど作品とマッチした街はないのではないか。筆者は音響の良さが知られる映画館のチネチッタに長年通っていることもあり、川崎駅周辺もよく知っているが、アニメの映像は駅周辺を忠実に再現しており、さらに今作の魅力を引き出せる街として、川崎は最適な選択だ。今回は川崎の特性から『ガールズバンドクライ』が描こうとする感情について考えたい。

 物語は熊本から高校を中退して川崎へと転居してきた井芹仁菜が、20歳のバンドマンである河原木桃香と出会うことでガールズバンドを結成し、数々のトラブル等も抱えながらもその感情を発散していく姿を描く。アニメーション制作を東映アニメーションが担当しており、イラストルックと称する3DCGアニメーションを制作、その映像技法でも話題を集めている。

 近年はアニメを制作するのにあたり、モデルとなった場所を精緻に描くことは珍しくない。現在放送されている『響け!ユーフォニアム』シリーズは京都府宇治市を舞台としており、登場人物たちが座るベンチは久美子ベンチとして、人気の聖地巡礼ポイントとなっている。

 『ガールズバンドクライ』では、主に神奈川県川崎市の川崎駅周辺を舞台とした描写が多い。例えば第1話において主人公の井芹仁菜と河原木桃香が演奏するのは川崎駅東口駅前広場。ここでは実際に大道芸やバンド演奏が行われており、人だかりができやすい場所だ。また第5話でメンバーが喧嘩する焼き鳥屋は登利亭という実在する店舗であり、奥まった路地にある名店として川崎では有名だ。

 一方で残念ながらすでに閉店してしまった店舗もいくつか見受けられる。第2話において安和すばるも交えて3人で食事をするしゃぶしゃぶ屋は、チネチッタも入るラ チッタデッラにあったのだが、2024年に閉店した。またバンドメンバーが練習する川崎DICE前のカラオケ店も閉店している。現在放送中ながらも、早くも街の移り変わりを感じさせる。

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