『Destiny』から『シティーハンター』まで “4つの顔”で世界を席巻する安藤政信

 これとは対照的なパフォーマンスを披露しているのが、『フクロウと呼ばれた男』である。安藤が演じるのは、社会を動かすほどの絶大な力を持つ黒幕/フィクサー(田中泯)の長男・一郎。彼は父に対して強い憧れを持っているが、トラブルを起こしては家族の足を引っ張ってばかりいる存在だ。感情的になることも多々あり、自分をうまく律することができない。良くいえば人間くさい人物だが、悪くいえば人間的に弱いところがある。『Destiny』の貴志とは真逆であり、これはこれで魅力的に思えたりもする。

 が、ズバリいってしまおう。一郎は未熟な人物だ。スキだらけである。彼の軽薄で情けない性格が、父だけでなく私たちをもハラハラ(あるいはイライラ)させる。安藤はほんの少しのセリフを発する際の声色や表情に一郎のキャラクターを馴染ませ、『フクロウと呼ばれた男』の世界にその存在を打ち立てている。物語に新たなドラマを持ち込む役どころではあるが、視聴者が彼の存在に拒絶反応を出してしまっては元も子もない。どうにも憎めないキャラクターを生み出しているのである(もしかすると本作の中でもっとも人間くさいかもしれない)。

 『Destiny』と『フクロウと呼ばれた男』は、どちらかといえばリアリスティックな作品だ。いっぽう、『陰陽師0』と『シティーハンター』はフィクショナルな作品である。前者は平安の世を舞台にVFXなどを多用したファンタジックな世界観の映画であり、後者は現代の新宿を舞台にしているものの、ド派手なアクションが繰り広げられる大人気コミックを原作とした映画だ。

 いずれの作品でも、安藤の出番は決して多いわけではない。『陰陽師0』では一人前の陰陽師になるべく勉学に励む学生のひとりで、『シティーハンター』では物語の序盤で退場してしまう。

Netflix映画『シティーハンター』©北条司/コアミックス 1985

 両作における安藤の重要な役割のひとつは、作品の持つ特異な世界観を提示すること。後者を例に取ると、こういった作品は導入部こそがもっとも重要だ。非現実的な世界観を築き上げながら、観る者たちを誘わねばならない。安藤はその肉体と声をもって自身の演じる槇村秀幸というキャラクターを立ち上げ、『シティーハンター』の世界観を構築することに貢献している。私たちが一つひとつの作品を愉しめているのは、こうしたプレイヤーの存在があるからなのだ。

 安藤といえば、中国映画や台湾映画など海外での活動経験もある俳優であり、“映画俳優”という印象が強い存在だった。けれども2010年代の後半頃からテレビドラマへの出演も活発だ。配信作品の隆盛により、日本にいながら“世界デビュー”を果たす者も少なくない。安藤はいま“4つの顔”で、世界を席巻している。

■放送情報
『Destiny』
テレビ朝日系にて、 毎週火曜21:00~21:54放送
出演:石原さとみ、亀梨和也、宮澤エマ、矢本悠馬、田中みな実、安藤政信、仲村トオル、佐々木蔵之介、高畑淳子、曽田陵介
脚本:吉田紀子
監督:新城毅彦、星野和成、中村圭良
ゼネラルプロデューサー:中川慎子(テレビ朝日)
プロデューサー:浜田壮瑛(テレビ朝日)、森田美桜(AOI Pro.)、大古場栄一(AOI Pro.)
音楽:得田真裕
主題歌:椎名林檎「人間として」(EMI Records/UNIVERSAL MUSIC)
制作協力:AOI Pro. 
制作著作:テレビ朝日
©︎テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/destiny/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/Destiny_tvasahi/
公式Instagram:https://www.instagram.com/destiny_tvasahi/

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