『涙の女王』キム・スヒョン&キム・ジウォンが再び夫婦に 『愛の不時着』超える有終の美

『涙の女王』ヒョヌ&ヘインの変わらぬ愛

 最終話となり、これまでの伏線が次々に回収されていく中で、思いもよらない伏線の種がまかれていたことに気がつき、まさかの展開が訪れた。第14話を振り返ると、ヒョヌとヘインがヘインの希望で墓地を散歩する場面がある。ヘインはそこで「公園に墓地があるなんてすてきよ。埋葬されるのが山や海じゃなくて街の近くなら死ぬのも怖くないわ」とヒョヌに話すのだが、そこで墓に花を供える老人の姿を見る。「奥様のお墓かな?」というヘインだが、ヒョヌには何も見えない。ヘインにしか見えていないこの幻覚の老人が、最終話での未来のヒョヌであり、ヘインの眠る墓にラベンダーを供える未来予知だったことがわかる。ラベンダーは、物語の中でときおり登場していたのだが、ラベンダーの花言葉「あなたを待っています」も粋で感動を呼ぶ小道具として演出されていたのだ。ヒョヌが、何気なく話したヘインの言葉をしっかりと聞いて叶えてあげたことに感動させられる。ヒョヌという夫はどこまでもロマンティックで、愛情深い夫なのだろう。

 さらに、ヘインが時折見ていた幻覚の中には、ウンソンの最期となる雪の現場もあり、病による幻覚でヘインは未来を視ていたということが明かされた。この壮大な伏線回収は、視聴者の予想の遥か斜め上をいく展開であり、「まさか」に鳥肌を立てたり、置いてけぼりになったりと、観るものの数だけの感情を刺激し、賛否両論の大反響を呼んだ。ほかにもヒョヌのビデオメッセージが見たかったという声もあるが、これは本作が愛されたからこその反響の大きさだろう。以降の時の流れは写真で見せるにとどめ、視聴者に想像の余地を残したものとなった。

 本作のタイトルは『涙の女王』だが、ヒョヌを演じたキム・スヒョンは物語冒頭から数々の涙を流し(Netflixによるとその数なんと40回!)、視聴者も共に涙した。キム・スヒョンが流した涙の質も量も圧倒的で、真のタイトルは『涙の王子』だったのではないかというくらい、彼のさまざまな泣き顔を見たような気がする。キム・ジウォンは、カリスマ性を放ち、洗練された美しさを持ちながら、愛を素直に表せない不器用なヘインの内面演技を秀抜な演技で演じきった。さらに名優ぞろいの俳優陣に映像美、美しいドイツロケに、キム・スヒョンが『星から来たあなた』以来10年ぶりにOSTに参加し、見事な歌声を披露したことにもスタンディングオベーションを送りたい。

 日本のNetflixでは省略されていたが、最後に制作陣からのメッセージがあった。「そばにいる大切な人たちを振り返り再び愛せる時間になったことを願って...…」という視聴者への感謝の言葉。そばにいるからこそ、意地を張りすれ違うこともある。けれど、大切な人との関係を互いに大事にして構築していくこと、愛はそこにあるだけではなく、大切に育てて共に育んでいくものなのだ。

 ヒョヌとヘインの美しい愛の人生を紡ぎ、数々のカメオ出演で心をときめかせたり、笑いを与えてくれた「THE韓ドラ」の本作。王道の名作ドラマとして、毎週の楽しみを与えてくれたことに感謝したい。

■配信情報
『涙の女王』
Netflixにて配信中
出演:キム・スヒョン、キム・ジウォン、パク・ソンフン
原作・制作:パク・ジウン、チャン・ヨンウ、キム・ヒウォン
(写真はtvN公式サイトより)

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