島﨑信長×内田雄馬×浦和希×海渡翼が『ブルーロック』で積み上げた“エゴ”とは?
自分の中に眠る“エゴ”とは何だろうか。原作は累計発行部数3000万部を突破し、“史上最もアツく、最もイカれたサッカーアニメ”として注目を集める『ブルーロック』。主人公の潔世一を中心に、日本をW杯優勝に導くストライカー育成プログラム“ブルーロック(青い監獄)”に集められた300人の高校生フォワードたちが、自身の生き残りを懸けた熾烈な戦いを繰り広げる。その姿は多くの視聴者の心を揺さぶり、自身の内なる“エゴ”について考えさせられた。その世界観の中で繰り広げられるもう一つの物語『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』が4月19日から全国公開中だ。
劇場版では、“めんどくさがり屋の天才”こと凪誠士郎の視点から、相棒・御影玲王との出会い、そして“ブルーロック(青い監獄)”での戦いが描かれる。本作は声優陣による魂の込められた演技によって、凪の内なる“エゴ”の覚醒に多角的な視点から迫る、深みのある一作とも言えるだろう。
そこで、凪誠士郎役の島﨑信長、御影玲王役の内田雄馬、潔世一役の浦和希、蜂楽廻役の海渡翼に、アフレコ現場の裏側や劇場版ならではの作品の魅力を聞いた。「熱いものを観て、自らも熱くなる現場」だと話す彼らは、まさに劇中で描かれる登場人物たちの姿と重なる。4人が作品の中で積み上げてきた“エゴ”とは、一体何なのか。(すなくじら)【インタビューの最後にはサイン入りチェキプレゼント企画あり】
TVシリーズと重なるシーンも録り直した劇場版
ーー今回の『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』は、桁外れのサッカーセンスを誇る天才FW・凪の視点で描かれる『ブルーロック』です。まずは、演技で注力した部分や難しさを感じた部分から教えてください。
海渡翼(以下、海渡):劇場版とTVシリーズで、蜂楽の登場シーンはほぼ同じなんですよね。でも彼の印象は全然違うんです。劇場版では度を越しているというか。もはや何をしでかすのかわからない、本当に恐ろしいキャラクターに映っていると思います。監督からも言われたのですが、劇場版で描かれるのは「潔から見た蜂楽じゃない、凪から見た蜂楽」。なので、そこはやっぱり演技で意識的に作り込んでいきました。いつも以上に、強さや気味の悪さを前面に押し出していくことで、作品としての面白さも増すんじゃないかって。限られたシーン数の中で、そこにフォーカスして全力で演じることを心がけました。
浦和希(以下、浦):「得体のしれない恐怖」は潔の演技でも、かなり意識していたところでした。TVシリーズでは潔の焦燥感や切迫感がずっと描かれていて、まるでギアが常に回っているような状態なんです。でも今回の劇場版では、そのギアが超高速で回転しているところを急に切り取って見せるような印象なんですよね。(観客は)徐々にギアが加速していく潔を観るのではなく、いきなり常軌を逸したスピードで回る潔のギアを目の当たりにする感じです。
ーー「AnimeJapan 2024」のステージでは、監督から「魔王のように」とディレクションがあったと話されていましたね。
浦:そうなんです。それを演技で表現するために、今までとは違うアプローチを取ってみました。もちろん根底にある潔の気持ちは変わりませんが、演技や表現の手法として、TVシリーズから一度距離を置いて、新しい角度から役に向き合ってみたんです。そういう意味では、かなりチャレンジングな芝居になりました。その結果改めて気づいたのは、「潔ってすごく怖い存在なんだな」ってこと。
ーー一方で、TVシリーズでは潔が葛藤する場面も多かったイメージです。
浦:潔はこれまで内面を掘り下げて描かれることが多かったから、どうしても弱さが表に出ちゃうんですよ。でも劇場版の潔は、表向きは決して弱さを見せない。圧倒的な強者としての存在感を保たないといけないんです。だから今回は、弱さを極力表に出さないように、「魔王」としての佇まいを心がけました。心の内にある苦しみをむき出しにするのでもなく、怒りをぶつけるわけでもない。ただただ凄まじい“圧”を周りにかけるつもりで演じました。人間としての、サッカープレーヤーとしての弱さは、できるだけ隠すように。そういうところを意識して芝居に臨みました。
ーー今回の物語のメインとなる凪誠士郎と御影玲王を演じた2人はどうですか?
島﨑信長(以下、島﨑):これまでのTVシリーズでしっかりと描かれている部分が多かったので、僕は凪を素直に演じることができました。原作もアニメもキャラクターが丁寧に描かれているから、ちゃんと凪としての人生を積み重ねていけば、自然と『-EPISODE 凪-』にも繋がっていくんです。
内田雄馬(以下、内田):僕もそうですね。台本とちゃんと向き合って、丁寧にアフレコすれば、しっかりと作品が組み上がっていく。つまりは自然と組み立てていけば、『-EPISODE 凪-』まで繋がっていく感じになると思って。
島﨑:TVシリーズの時点で、劇場版と同じ時系列の部分も出ていたので、凪の印象が変わるということもなく。たとえ描写がなくても「このキャラクターはこういう人生を生きてきたのかな」「この間でこんな出来事があったのかな」と想像するのが、声優の本来の準備だと思っています。
内田:我々もそれぞれいろんな想像をして。本編で玲王は潔から見た時、敵として現れたこともあって、激しい鋭角な芝居を求められたりもしましたが、今回は敵ポジションというフィルターをかけず、より自然に1個ずつ人間的に組み立てていけばいいわけで。我々もキャラのことをずっと考えているのですが、劇場版はあくまで(キャラが生きる)時間軸が違うだけなんですよね。
――TVシリーズと重なる場面もありますが、音声は録り直したのでしょうか?
浦:はい。スタッフの皆さんがスケジュールなどを考慮して、TVシリーズを流用するか悩んでいたんですけど、信長さんが「もう一度録り直したい」とおっしゃってくれて。みんなで「そうしましょうよ、やりましょうよ!」ってなって、録り直すことになったんです。改めて、潔としていいものが出せたなっていう手応えがありました。『ブルーロック』らしい、熱のこもった現場ですよね。
島﨑:声優って、「シーンに合うカッコいい声を出す仕事」に思われがちなんですけど。あくまで芝居を積み上げた上で作品を作っているので、今回は視点が潔から凪に変わっていることもあって、録り直さないと全体で観た時におかしくなっちゃうんですよ。
内田:しかも今回に関しては視点が変わる以上、1本の映画としてはノイズがでやすいというか。凪を中心にここまで書くなら、改めてこの映画のためにもう1回、役者も温度感を整理するべきだし。今回は視点が変わるからこそ、なおのこと(録り直しを)やる意味がとてもあると思いました。キャラクターの見ているものから聞こえる音……感じ方も変わるので。もう一度芝居をつくることには大きな意味があるはず。
――海渡さんは、そんな現場の雰囲気をどのように感じましたか?
海渡:「熱量って、本当に伝染するんだ!」って、心の底からだんだんと、ふつふつとこみ上げてくるものを感じました。熱いものを観て、自らも熱くなる現場と言いますか。僕は、現場で自分の意見を出すのが苦手なタイプで。でも現場の皆さんが、欲に前向きに向き合う姿を見て、僕もそういうふうになっていかなきゃいけないと勉強させていただく場でもありました。TVシリーズもそうなんですけれども、先輩と一緒にお芝居をさせていただくっていうのは、本当に貴重な機会ですよね。
島﨑:とはいえね? 基本は楽しくみんなやってたよね!
内田:そうですよね。
浦:この感じだと、超硬い現場みたいですよね(笑)。
島﨑:現場で生まれたものといえば、斬鉄(CV.興津和幸)にまつわるエピソードは……。
浦:“あれ”ね!
島﨑:そう(笑)。かなりラストに近いシーンで「斬鉄のセリフが裏で聞こえるようにしてほしい」って監督からオーダーがあったんです。でも、斬鉄ってセリフが結構難しい子なんですよね。(独特な台詞回しが)ふざけてるわけじゃなくて、本気だから。で、興津(和幸)さんも頭を悩ませて……。
浦:よ〜く耳をすませば聞こえるレベルなので、ぜひそこは聞いてほしいです。