『ガールズバンドクライ』はまるで実写ドラマの仕上がりに 突き抜けた3DCG&音楽の説得力

 4月から放送されているアニメ『ガールズバンドクライ』が話題を呼んでいる。これまで女性を主人公に据えた音楽アニメといえば、『けいおん!』や『BanG Dream!』といった作品が一大ブームを巻き起こしてきたが、本作もそのポテンシャルを十分に備えたアニメだと筆者は言いたい。

 正直、最初は半信半疑だった。アニメ制作会社大手・東映アニメーションと、音楽×クリエイティブカンパニー・agehasprings、大手レコード会社・ユニバーサルミュージックの3社がタッグを組んで制作。監督は『ラブライブ!サンシャイン!!』で監督を努めた酒井和男、プロデューサーは『ラブライブ!』シリーズ生みの親である平山理志、キャラクターデザインはVTuber「星街すいせい」のイラストを手掛けた手島nari、音楽はYUKIやAimerなどの楽曲プロデュースを行ってきたagehaspringsの代表にしてプロデューサーの玉井健二という名実ともに優れたクリエイターが集結するという大規模なプロジェクトである以上、必然的にアニメファンの注目を集めるわけだが、それ以上に目の肥えたアニメファンを納得させられるのかという心配があったからだ。

 だが、第1話の歌唱シーンの映像と音楽を観た時にその不安は払拭された。3DCGで描かれた滑らかな人物の表情や動き、そして劇中バンド「トゲナシトゲアリ」による圧倒的な表現力はそれだけで大きな説得力をもっていた。

 本作は高校を中退し単身で上京した井芹仁菜が、駅前でたった一人で歌うストリートミュージシャンの河原木桃香と出会い、ロックバンド「トゲナシトゲアリ」を結成。それぞれ境遇は違うものの、悩みを抱えた5人の少女が世の中の不条理さに立ち向かい、自分たちの居場所を探す青春ストーリーとなっている。

 上京してきた仁菜が駅前で桃香と出会い一緒に歌うまでが描かれた第1話。悩みを抱えた少女が音楽に救われて、自身もミュージシャンを目指すというストーリー展開はもちろん魅力ではあるが、本作のクオリティを担保しているのは3DCGによる映像とトゲナシトゲアリの音楽によるところが大きい。

 第1話では桃香がミュージシャンを辞めて旭川に帰ることを知った仁菜が、桃香がギターに残した「中指立ててけ!」というメッセージに感化されて、桃香への思いを叫ぶラスト。仁菜の「一緒に中指立ててくださーい!」の叫びとともに、トゲナシトゲアリの「空の箱」の歌唱シーンへと移る演出は初回としては素晴らしい掴みだった。また、3DCGによって歌唱時にはキャラクターの表情の機微が丁寧に描かれており、キャラクターに感情移入がしやすいという点も本作の見どころだ。

 東映アニメーションの平山理志プロデューサーは同作におけるアニメーションを「手描きのようでもなければ、ピクサーのようなリアルルックのものでもない、日本独自のCGアニメーションを目指しました」と語る。キャラクターデザインのイラストをそのままアニメーションで再現することを試みた作品であることも明かしており、そうした制作陣のこだわりが凝縮された第1話だった(※)。

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