『ブギウギ』「父ちゃんブギ」“最期”の撮影は一発OK 趣里×柳葉敏郎、涙の芝居の裏側

 NHK連続テレビ小説『ブギウギ』が現在放送中。“ブギの女王”と呼ばれる笠置シヅ子をモデルに、大阪の銭湯の看板娘・花田鈴子=福来スズ子(趣里)が戦後のスターへと上り詰めていく姿を描く。

 昭和26年秋、スズ子は「梅吉(柳葉敏郎)危篤」との知らせを受け、愛子(小野美音)を連れて香川へ。第110話では、まもなくその時を迎えようとしている梅吉と一緒に「東京ブギウギ」の替え歌「父ちゃんブギ」を歌うなど、2人の最後のやり取りが描かれた。

 制作統括の福岡利武は「あのシーンの撮影は15分以上ありましたが、リハーサルせずにそのまま本番を撮りました。撮影部も気合が入っていましたし、すごく集中して静かに撮影が始まりました。編集後には10分ほどの映像になっていますが、その長さを感じないほど、感情を揺さぶる場面になったのではないでしょうか」と自信を見せる。

「足立(紳)さんの脚本に『父ちゃんブギ』と書かれていて、最初は『こんな歌、あったっけ?』と思いましたが(笑)、素晴らしいアイデアだなと。きっと梅吉さんにはスズ子の歌がそう聴こえていて、いつもあの歌を口ずさんでいた。そして、それを最後にスズ子と一緒に歌うという。ステージ以外にも、“歌の力”が発揮できる場面を描きたいと思っていたので、すごくよかったと思います」

 同シーンでは、これまで一度もスズ子に“血縁関係がない”という事実を明かすことがなかった梅吉が、初めて本心を口にする。この展開について福岡は、「笠置さんは最後まで『自分の両親は(育ての親である)音吉さんとうめさんだ』と通していらっしゃいましたので、その思いも汲みたい。一方で足立さんは、しっかりと梅吉さんの言葉として表現したいと。そこで、“梅吉は言うつもりがなかったけれど、スズ子の独り言が聞こえたことで、奇しくも話すことになってしまった”という展開にさせていただきました」と打ち明ける。

 撮影は一発OK。クランクアップを迎えて晴れやかな表情を浮かべる柳葉に対し、芝居の延長線上ということもあって涙を流していたという趣里。そんな2人の関係性があるからこそ成り立った名場面について、福岡は「『父ちゃんブギ』を歌って号泣するスズ子と梅吉の姿が、血の繋がりはさておき、本当の親子に見えるところが素敵だなと思いました」と語る。

 切ない展開が続いた第23週だが、実は梅吉が水着の女性をたくさん撮影していた、というクスッと笑えるエピソードも。福岡は「足立さんが“どこかに笑いを”と強く意識されていることから生まれたシーンですが、あの写真を撮影したスタッフがものすごく力を入れていて(笑)。まるで梅吉さんになったかのようにしっかりと写真を撮りに行ってくれました」と裏話を明かした。

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