『ブギウギ』柳葉敏郎が体現する“明るい父親像”が胸に迫る 最後まで貫く梅吉らしさ
『ブギウギ』(NHK総合)第109話では、スズ子(趣里)がアメリカから帰国する。4カ月ぶりに日本に帰ってきたスズ子は「あ……愛子! 愛子〜! マミーやで! 愛子! マミーやで! 今帰ったで!」と声をあげながら帰りを待つ愛子(小野美音)のもとへ駆け出した。スズ子は目に涙を滲ませながら、久しぶりの再会に恥ずかしがる愛子を抱きしめる。愛子もまたぎゅっと抱きしめ返した。
スズ子がアメリカから帰国して1年が経ったある日、がんで闘病していた梅吉(柳葉敏郎)が危篤になったと知らせが入った。スズ子は愛子を連れて香川へ向かう。
梅吉の部屋に行く途中、愛子がカメを見つける。スズ子の3歳下の弟・六郎(黒崎煌代)が大切にしていたカメだった。梅吉はスズ子と愛子が会いに来てくれたことを喜び、緊張する愛子に「よう来てくれたなあ。大きゅうなって、べっぴんやな」「かわいいやろ? そのカメ」と笑いかける。その声色には梅吉らしい明るさがあったが、梅吉はもう起き上がることもできないほどに体が弱っていた。
スズ子と梅吉が2人きりになると、しばらくの間、無言の時間が続く。言葉を交わすことなく、ただお互いを見つめ合うその時間には、別れが近いことを感じさせる悲しげな空気も漂うが、親子水入らずの時間でもあり、あたたかさもあった。しばらくして、スズ子は普段と変わらぬ明るい声を出して「まだ元気やったんやな、あのカメ」と話しかける。
「よう長生きしとるわ。六郎の分まで生きとんのやろ」と返した梅吉は、スズ子をじっと見つめて「会えてうれしいわ」と気持ちを伝える。病床に伏した状態ながらも「うれしゅうて……2時間ほど寿命延びたわ」とおどけて見せる梅吉に、「相変わらず……つまらんなあ」とスズ子は笑った。梅吉が病に冒されながらも持ち前の明るさを失わず、娘と孫に笑いかける様子は胸に迫るものがあった。