『ブギウギ』息子と孫への愛を貫いたトミ スズ子の“残された者”としての物語

 ついこの前まで一緒に映画を撮っていたタナケン(生瀬勝久)も入院する最中に重なった訃報。どんどん、スズ子の人生に関わる人がいなくなっていってしまう。戦後の日本を元気付けた曲、そしてそれを陽気に歌う主人公を描く『ブギウギ』の物語は、その明るさに反してこれほどの短い期間に彼女の人生に訪れる“死”が印象的だ。

 誰かに笑顔をもたらした歌手は、ずっと大切な人を失い続け、それでもその誰かのために笑顔で居続けようとする。子供の頃から観るものをワクワクさせていた彼女の快活さは、気がつけばここ数週で母になったこともあってもっと深みのあるものになった。いや、思い返すと彼女は若い時から試練続きだったり、父・梅吉(柳葉敏郎)や小夜(富田望生)の面倒を見ることになったりと、大人にならざるを得ない場面が多かった。もちろん、家族や知人の死の経験もそこに重なるだろう。

 第21週から登場した家政婦の大野晶子(木野花)も、スズ子のように大切な人を失ってきた人生を歩んでいる。第102話で彼女の過去を知ったスズ子が、愛子(小野美音)を連れて大野と一緒に買い物に行くシークエンス、そこで描かれた残された者たちがまるで家族のようにして寄り添って歩く後ろ姿が忘れられない。失っていくことも、人生なのだと『ブギウギ』は教えてくれる。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、生瀬勝久、小雪、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
語り:高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー) 
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
音楽:服部隆之
主題歌:中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」
写真提供=NHK
公式サイト:https://nhk.jp/boogie

 

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