『ブギウギ』スズ子の新曲「ジャングル・ブギー」とは? 物語の背景や歌詞から紐解く

 そこで作曲家の羽鳥善一(草彅剛)のもとへ駆けていき、スズ子の熱意に共鳴するようにして生まれるのが「ジャングル・ブギー」である。

 現代も聴き継がれる「東京ブギウギ」や、主演舞台『舞台よ!踊れ!』のステージで披露した「コペカチータ」、『ジャズカルメン』のステージ上で歌い上げた「ハバネラ」など、大衆を熱狂させるいくつもの名曲を披露してきたスズ子。それぞれの楽曲は“時代”を反映していて、歌い手であるスズ子のマインドも投影されている。

『ブギウギ』ついに「東京ブギウギ」披露! 史実ではどのように楽曲が誕生した?

「これは福来くんの復興ソングでもあると同時に、日本の復興ソングでもあるんだ!」  NHK連続テレビ小説『ブギウギ』第90話では…

 この「ジャングル・ブギー」の歌い出しは〈ウワオワオワオワオワオワオ〉というもの。非常に野性的で、これまでの楽曲たちとは一線を画すものだろう。とくに「東京」という大都会を舞台にした「東京ブギウギ」とは対極にある歌なのではないだろうか。とはいえ野性的な叫びは、あくまでも感情の比喩のようなもの。「女豹」の視点で綴られていている恋の歌詞に登場する「ジャングル」とは、彼女たちの生きる時代や社会や環境を指しているのだろう。

 史実において「ジャングル・ブギー」は映画監督の黒澤明が作詞し、彼の手がけた『酔いどれ天使』(1948年)の劇中歌として使われている。三船敏郎や木暮実千代といった映画スターが登場する酒場でのダンスシーンにて、スズ子のモデルである笠置シヅ子も自ら歌って踊っているのだ。

 笠置シヅ子の人生はリアル(=現実)であり、スズ子の人生はあくまでもフィクション。だからモデルにしているとはいえ、まったく違う。「あんたにできることは歌だよ」というおミネの言葉に呼応するように、『ブギウギ』の世界観の中でこの歌は生まれることになる。「友達に聴かせたい」という強い想いを抱くスズ子のパフォーマンスに期待できるのは、やはりステージ上での一瞬をたくましく生きること。彼女はこの時代を象徴する大スターであり、この時代を生きるひとりの女性なのだから。その姿に誰もが自身を投影させるはずである。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、生瀬勝久、小雪、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
語り:高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー) 
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
音楽:服部隆之
主題歌:中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」
写真提供=NHK
公式サイト:https://nhk.jp/boogie

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