『光る君へ』柄本佑が道長として初めて見せた激情 “最高権力者”への片鱗も随所に

 東三条殿に戻った道長は、道兼を問い詰める。「やはり見ておったか」という道兼の言葉に、6年前、血に塗れた姿で帰ってきた兄の姿を思い出す。すべてがつながった道長は怒りに震えていた。人を殺めたことを悪びれもしない道兼に、道長は激昂し、兄を殴り飛ばすが、道兼はお前のせいだと言う。道長は言葉が出なかった。

 道兼への憤りだけでなく、まひろの心を切り裂くような出来事を引き起こしたのは自分なのかもしれないと思い詰めているようにも見える。道長を追い詰めたのは兄の態度だけではない。「お前が俺をいらだたせなかったら、あんなことは起きなかったんだ」という兄の言葉に絶句していると、道兼の罪をもみ消した父・兼家が笑い出す。

「道長に、このような熱き心があったとは知らなんだ。これなら、我が一族の行く末は安泰じゃ」

 道長はまひろに一族の罪を詫びたが、自分もまた、権力を得て政治のトップに躍り出ようと画策する一族の息子なのだと痛感したのだろう。道長のゾッとしたような表情が心に残る。

 父・兼家や一族のあり方に複雑な思いを向ける道長だが、道長の言動にはのちの最高権力者である片鱗が垣間見える。

 物語序盤で、道長は兼家に、公任と斉信が花山天皇(本郷奏多)の志の高さを素晴らしいと讃えていることを話した。兼家から「おのれの考えはないのか」と問われた道長は「大事なのは、帝をお支えする者が誰かということではないかと」と答える。その言葉を聞いた兼家は、誇らしい面持ちで道長の考えを褒めた。

「我が一族は、帝をお支えする者たちの筆頭に立たねばならぬ」
「その道のために、お前の命もある。そのことを覚えておけ」

 道長には兼家のような貪欲さはまだ見えてこないが、考え方の根幹は兄たちよりも父に似ている。道長とまひろの関係も気になるが、貴族社会をどこか達観した目で見つめている道長が最高権力者となっていく展開にも心惹かれる。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK

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