『ブギウギ』で発揮される趣里の身体表現 漫画さながらの愛らしいオーバーアクションも
身体性を演技に昇華できるのが趣里の強みで、感情を動作で表現するレパートリーを豊富に持ち合わせている。日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ各賞を受賞し、出世作となった2018年公開の『生きてるだけで、愛。』では躁うつと過眠症の主人公を演じた。当時は体当たりの演技として話題になったが、重要なのは彼女が何を表現したかである。趣里が演じた寧子は生々しく魂の叫びそのものだった。
同時期の『ブラックペアン』(TBS系)で演じた猫田は有能な看護師だが、部外者を寄せ付けない冷徹さとおどろおどろしさを醸し出した。射すくめるようなまなざしと表情の演技はネット上で話題になった。求められれば自分をさらけ出すことを厭わない趣里だが、基礎練習を重ねることで培った柔軟かつ強固な身体表現がベースにある。
こうして見ると、どうしてもちらつくのが実父である水谷豊の影だ。この期に及んで親の七光りなどという的外れな評価をする者はいないけれど、俊敏かつウィットに富んだ画面上の所作を見るにつけ、若き日の水谷を重ねずにいられない。『ブギウギ』で趣里の魅力は全開になった。円熟の俳優人生を刻む父のように、彼女ならではの道を歩むことを期待してやまない。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK