『ブギウギ』トミがスズ子に投げつけた“分別”という言葉 幸せの絶頂から不幸のどん底へ

 朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)第60話は、アバンなしのタイトルバックから始まり、愛助(水上恒司)と母・トミ(小雪)の再会、スズ子(趣里)とトミの初対面、善一(草彅剛)の上海行き、空襲警報の中お姫様抱っこで逃げる愛助とスズ子、そっと口づけを交わす2人、喀血する愛助、という幸せの絶頂から不幸のどん底へと落ちていく急転直下の展開による15分間となった。

 あなたは村山興業の跡取りであり、歌手のスズ子があなたのことを支えることはできないと、トミから別れるように告げられた愛助。スズ子を交えた面談の場では当然厳しい言葉を投げかけられると覚悟をしていたが、「愛助は村山興業の後継ぎになる人間だす。そのことを重々ご理解ください」というあっさりとした一言を残してトミは応接室を去っていく。呆気に取られた愛助は「僕らに任せてくれはったんかな?」と受け取るが、スズ子は「きっぱり別れろ」という意味であると理解していた。

 トミは同時にスズ子を「ええ歌を歌いなはる」とその実力を認めながら、「USKの下積みで苦労もしてはるやろし、ように分別のあるお人や思います」とも話していた。そのことはスズ子にトミのこれまでの人生を想像させていたはずだ。女手一つで村山興業を日本を代表する興行会社へ成長させたトミにとっての一人息子。そんな愛助に会社を託す上で、妻としてスズ子を迎える選択は会社として相応しくない。“分別”とは、きっとそういうことであろう。

 だが、そんな逆境の中でも愛助のスズ子への気持ちは燃え上がっていく。愛助は大学を辞めて、早くから村山興業で働くことを考えていた。そうすることで、きっとスズ子との交際を母に認めてもらえるようになる。愛助にとっては、いつの間にかスズ子が一番の優先事項になっていた。それは自分の夢を犠牲にしてでも。

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