『幽☆遊☆白書』浦飯幽助は“不良すぎる”? “悪の申し子”とされていた原作第1巻の設定
原作では筋金入りの不良だった幽助だが、さすがに教育に悪いと判断されたのか、1992年から放送されたアニメ版『幽☆遊☆白書』ではやや設定が改変されている。たとえばタバコを吸うシーンは、ガムを噛む姿などに差し替えられていた。
また、第1話で同じ学園の生徒にカツアゲを行うシーンでも、怯えた生徒から財布を突き出されると、「んなもんいらねーよ!」と受け取ることを拒否している。総じていえば、アニメ版の幽助は今から見ても穏当な不良キャラの範疇に収まっていると言えるだろう。見比べてみると、原作がいかに不良描写に踏み込んでいたのかよく分かる。
ただ、だからといって原作『幽☆遊☆白書』の不良描写が特殊だったわけでもない。当時は少年マンガの世界で、不良キャラが人気を博していたからだ。
同作の連載が始まった1990年の『週刊少年ジャンプ』を見ると、不良少年・桜木花道がバスケットボールに目覚める『SLAM DUNK』の連載がスタート。その1年前には、同じく不良少年・空条承太郎を主人公に据えた『ジョジョの奇妙な冒険』の第3部が幕を開けている。
この承太郎も、ケンカの相手を必要以上にブチのめしたり、能なし教師に気合を入れて二度と学校に来なくしたり、不味い料理を提供するレストランに代金を払わなかったりと、現代の基準でみると相当のワルだ。当時は不良主人公が、一種のスタンダードとして受け入れられていたとみるべきだろう。
また他の少年マンガ誌でも、1990年には『週刊少年マガジン』で『カメレオン』や『湘南純愛組!』が連載を開始。西森博之の『今日から俺は!!』が、『増刊少年サンデー』から『週刊少年サンデー』に移籍したのもこの年だ。1980年代に始まった不良マンガのブームが、まだまだ続いていた時期だったと言える。
『幽☆遊☆白書』は、そんな時代の波に影響されていた作品だった。幽助はそもそも素行だけでなく、その髪型においても不良マンガブームの影響を受けている。2016年に『少年ジャンプ+』で行われた石田スイとの対談において、冨樫義博は1980年代の不良マンガ『湘南爆走族』について言及。普段リーゼントにしている主人公が髪をおろした時のギャップに魅了され、その表現を幽助の描写に取り入れたと語っていた。(※)
もうすぐ放送が始まる実写ドラマ版の『幽☆遊☆白書』では、原作そのままの不良として幽助を描くのか、それとも現代風のマイルドな不良に変更するのか。配信の日を楽しみに待ちたい。
参照
※ https://www.shonenjump.com/p/sp/1606/hyskoa/
■配信情報
Netflixシリーズ『幽☆遊☆白書』
Netflixにて、12月14日(木)より全世界同時配信予定
出演:北村匠海、志尊淳、本郷奏多、上杉柊平、白石聖、古川琴音、見上愛、清水尋也、町田啓太、梶芽衣子、滝藤賢一、稲垣吾郎、綾野剛
原作:冨樫義博『幽☆遊☆白書』(ジャンプ・コミックス刊)
監督:月川翔
脚本:三嶋龍朗
VFXスーパーバイザー:坂口亮(Scanline VFX)
エグゼクティブ・プロデューサー:坂本和隆
プロデューサー:森井輝
制作プロダクション:ROBOT
企画・製作:Netflix