『大奥』志田彩良演じる家茂のあまりに切ない最期 200年以上に渡る物語もいよいよ終幕へ

 一緒にいるだけで心が温かくなるような2人の日々が1日でも長く続けば……と願ったのもつかの間、別れは突然やってくる。和宮の引き留めも虚しく、第二次長州征伐の指揮をとるために再び上洛した家茂は体調を崩し、そのまま帰らぬ人となった。直前まで勝海舟(味方良介)に大政奉還を提案するなど、戦を回避する道を必死に探り続けていた家茂。孝明帝が感謝を述べるほどに、誰よりも国の行く末を案じていた彼女は人の上に立つべき人間だった。

 けれど、そんな家茂が最後の最後に口にしたのは「大奥に帰りたい。親子さまに会いたい!」という、ただ一人の人間としての切実な願い。その壮絶な死に目に居合わせた志摩(中村アン)から家茂の様子を聞かされた和宮が願ったように、本当は家茂も国のことなど考えず、ただ2人で安らぎに満ちた日々を送りたかったことだろう。でも、お節介な家茂は同じように多くの人が望む平穏を守るために心血を注いだ。それだけで信頼に足る慈愛に溢れたあの笑顔、和宮の前だけで見せる無邪気な振る舞いが忘れられない。“可憐”という言葉はこの人のために存在しているのではないかと思うほどに、聡明でいて愛らしい家茂を志田彩良が演じてくれた。

 それにしても、200年以上前に有功(福士蒼汰)が無理やり連れてこられた大奥が、“帰りたい場所”になると誰が予想したことだろう。将軍との子を生み育て、血筋を繋いでいく場所だった大奥は、今や天璋院(福士蒼汰/二役)が言うように血の繋がらない者たちが肩を寄せ合い生きる場所となっている。多くの者たちが道半ばでこの世を去っていったが、彼らの誰かを慈しむ気持ちや願いの結晶とも言えるだろう。だが、時代の急速な変化はもはや止められず、やがて大奥も終焉を迎える。そして、長いようで短かったこの物語も幕を閉じるのだ。

■放送情報
ドラマ10『大奥』Season2
NHK総合にて、毎週火曜22:00〜22:45放送
出演:
【医療編】
鈴木杏(平賀源内)、玉置玲央(黒木)、村雨辰剛(青沼)、岡本圭人(伊兵衛)、中村蒼(徳川家斉)、蓮佛美沙子(御台・茂姫)、安達祐実(松平定信)、松下奈緒(田沼意次)、仲間由紀恵(一橋治済)
【幕末編】
古川雄大(瀧山)、愛希れいか(徳川家定)、瀧内公美(阿部正弘)、岸井ゆきの(和宮)、志田彩良(徳川家茂)、福士蒼汰(天璋院・胤篤)
原作:よしながふみ『大奥』
脚本:森下佳子
音楽:KOHTA YAMAMOTO
写真提供=NHK
©よしながふみ/白泉社

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