『フェルマーの料理』海と布袋の情熱的なやりとり 岳の新たな目標が定まることに

 岳が繊細に提案した「まずは前菜のクスクスのタブレ」という言葉に、布袋は疑問を込めて「まずは?」と反響させた。岳は、前菜に独創的なひねりを加え、スープを合わせてクスクスのトラパネーゼへと料理を昇華させる。そして、最後にカツ丼を思わせる岳オリジナルの「仔牛のコートレット」をメインディッシュとして提供した。岳が仕上げたのは、1品に見せかけた3品の料理で、パーティーに映える演出がこれまた楽しい。オイラーの等式からインスピレーションを得ながらも。布袋の昔のアイデアを巧みにアレンジした岳の心の底には、「みんなで高みを目指したい」という強い願いがあった。

 結果発表の直前、穏やかながらも重みのある海の声が響く。「布袋、ここにいる4人を実力で並べてくれないか」という問いに、厨房の空気は一変する。海の挑発に応えるかのように、布袋は予期せぬコンペへの参加を心に決める。しかし、自慢のコートレットを口にした瞬間、彼は時間が止まったかのように動けなくなってしまう。さらに海は「スー・シェフになってから新しいレシピを創造することを忘れた」と布袋を深く責め、情熱的に「感じるな! 考えろ! シェフなら」と迫る。この熱いやりとりから、海が布袋をどれほど信頼し、尊敬しているのかが伝わってきた。

 第6話では、副料理長・布袋の内面が繊細に描かれ、かつてオーナーシェフとして活躍していた彼が、海のために自らの店を閉じ、新しい道を歩む決意をした背景が語られる。言葉は多くはないものの、スー・シェフとしての誇りと情熱を胸に秘めた布袋の姿を、細田が好演している。「でも負けを認めたら楽になってさ」「どうして俺の前に現れたんだよ。出会いたくなかったよ、お前と」という悔しさに満ちたセリフと、今まで布袋が抱えてきた感情が、堰を切ったように涙とともに溢れる細田の演技は特に印象深い。

 見事にコンペを勝ち抜き、海から「今回の件で、また一歩俺に近づいたな」という称賛を受け、岳は嬉しそうな表情を見せる。しかし、当日行われるのが数学界で名誉ある楠瀬正美賞のパーティであることを知り、その招待リストを見た岳は過呼吸に陥ってしまう。どうやら、その背景には“広瀬”という人物が関わっている模様だが、詳細は来週までお預けのようだ。越えるべきライバル”の存在は、レストランKの外にもまだ存在するということなのだろうか。海と岳が料理界の真理の扉を開ける日は、まだ少しだけ先になりそうだ。

■放送・配信情報
金曜ドラマ『フェルマーの料理』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
U-NEXT、Netflixにて配信中
出演:高橋文哉、志尊淳、小芝風花、板垣李光人、白石聖、細田善彦、久保田紗友、及川光博、宮澤エマ、細田佳央太、宇梶剛士、高橋光臣、仲村トオル
原作:小林有吾『フェルマーの料理』(講談社『月刊少年マガジン』連載)
脚本:渡辺雄介、三浦希紗
プロデューサー:中西真央
演出:石井康晴、平野俊一、大内舞子
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/fermat_tbs2023/
公式X(旧Twitter):@Fermat_tbs
公式Instagram:fermat_tbs
公式TikTok:@fermat_tbs

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