朝ドラ『ブギウギ』草彅剛の“不気味”な笑顔に引き込まれる “黄金タッグ”が邂逅
「歌は誰かが歌ってそれを観客が聴いて初めて完成するんだ」
梅丸少女歌劇団(USK)を退団し、秋山(伊原六花)と共に東京へ上京してきたスズ子(趣里)がいよいよ羽鳥善一(草彅剛)との出会いを果たす。『ブギウギ』(NHK総合)第27話では、羽鳥たちの前でスズ子が歌声を披露する。
東京を訪れたスズ子たちは強面な吾郎(隈本晃俊)や無口で関西弁が大嫌いなおでん屋の主人・伝蔵(坂田聡)など、早くも東京の洗礼を受ける。誰にでも懐深く受け入れてくれる大阪とはまるで違っていた。だからこそ、「娘ができたみたいだね」と話す下宿屋の女将・チズ(ふせえり)のようによく喋る面倒見の良さが温かく感じられる。スズ子にとって家族のような場所が東京にもできていた。
翌日、梅丸楽劇団(UGD)を訪れたスズ子と秋山。演出家の松永(新納慎也)は「緊張しなくていい。何も心配いらないよ」と道に迷って遅れてしまった2人を快く受け入れてくれるが、手を繋いだり、肩に手をかけたりとフレンドリーな接し方にスズ子たちは困惑。だが、緊張している時にこそ松永のような存在は安心できたりもする。松永のいい意味で欧米ライクな振る舞いはスズ子たちにとっても心強かったに違いない。
UGDの関係者が集まる部屋に通されたスズ子と秋山を待っていたのは、振り付け担当兼トップダンサーの中山史郎(小栗基裕)、トランペット奏者でバンドマスターの一井(陰山泰)、そして音楽監督の羽鳥だった。無口な中山とひょうきんな一井、そして捉えどころのない羽鳥と、どれもくせ者揃いだ。何より羽鳥を演じる草彅剛の笑顔は不気味だが、なぜか惹き込まれてしまう魅力がある。チャーミングな笑顔の裏には並々ならぬ音楽への情熱があるのだろう。部屋に入るやいなや「男の人ばっかりや」とスズ子は声を漏らしていたが、スズ子たちが生きる昭和13年はまだ男性の活躍が目立っていた時代。スズ子の一言を挟むことで、当時の社会の構造がなんとなく伝わってくる。
羽鳥が「別れのブルース」の作曲者であることを知り、「わて、あの歌大好きです」と興奮気味に話すスズ子。「別れのブルース」は東京に来るきっかけをくれた楽曲でもあり、落ち込んでいたスズ子を励ましてくれた思い出の楽曲でもある。スズ子が楽曲への熱い思いを熱弁すると、羽鳥は笑みを浮かべながら「福来君、ちょっとだけ歌ってもらっていい? なんでもいいから」と促される。羽鳥にとっては自分の楽曲に見合った歌声なのかを知るため、スズ子にとっては自分の実力を示すための絶好の機会というわけだ。