黒木華演じる山住先生も熟読! 『下剋上球児』と『ストッパー毒島』の共通点を読む

 日曜劇場『下剋上球児』(TBS系)は、弱小校だった三重県の公立白山高校が甲子園に初出場を果たすまでの歩みを描いた菊地高弘著のノンフィクションを原案にしたオリジナルストーリーだ。

 三重県立越山高校の野球部は、予選で10年連続1回戦負けという弱小チーム。しかも、現在は部員が1人しかいなくて廃部寸前という状態だった。そこへ野球に情熱を注ぐ山住香南子(黒木華)が強豪校から赴任、かつてプレーヤーだった教員の南雲脩司(鈴木亮平)と出会うことで、錆びついていた野球部の歯車が動き出していく。

 弱小校が甲子園出場を果たすという物語の基本的なフレームは原案のノンフィクションと同じだが、主人公の南雲が教員免許を偽造していたなど、ドラマ独自の設定も数多く出てきており、今後の展開は予断を許さないところがある。

 ストーリーの鍵になるのではないかと思ったセリフが第2話にあった。山住が南雲に語ったものだ。

「小学校の頃、いつも野球帽を被っていたので“野球バカ”ってあだ名がつきました。クラスの女の子たちが『ハチクロ』読んでキュンとしているときに、私は『ストッパー毒島』を読んでグッと来ていました」

 王道ドラマ枠の日曜劇場の途中で、突然出てきた『ストッパー毒島』というフレーズにネットは沸き、あっという間にトレンド入りした。

 『ストッパー毒島』は『BECK』などで知られるハロルド作石による野球漫画。パ・リーグのお荷物球団・京浜アスレチックスに入団した最速163キロを誇るがとてつもなくケンカっ早い新人投手・毒島大広とチームの仲間たちが奮闘する物語だ。プロ野球選手やプロ野球OBが大挙して実名で登場し、オフビートなギャグもちりばめられているが、作者の豊富な野球知識に裏付けされたリアルさと、弱小球団がリーグ優勝を目指すストーリー展開がとにかく熱くて爽快でたまらない。野球漫画の名作だと断言していいだろう。全12巻で完結するスピーディーさも良い。

 『ストッパー毒島』が『週刊ヤングマガジン』(講談社)に連載されたのは1996年から1998年にかけてのこと。山住が何歳なのかはわからないが、演じている黒木華の年齢を考えると30代前半と考えるのが妥当だろう。彼女が小学生から中学生といえば2000年代前半となる。クラスの女の子たちが読んでいたという『ハチミツとクローバー』はまさにその頃の作品だ。

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