『ONE DAY』笑いとシリアスを表現する大沢たかお 「レストラン編」は別世界のように

 二宮和也を中心とする「逃亡編」、中谷美紀を中心とする「地方テレビ局編」、そして大沢たかおを中心とする「レストラン編」の1日をぎゅっと1クールのドラマに詰め込んだ『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(フジテレビ系)。

 12月24日になったばかりの深夜、逃亡犯である誠司(二宮和也)が突然、逃げ込んできたばっかりに、先代から受け継いできたデミグラスソースが入った寸胴鍋がひっくり返ってしまったり、拳銃が見つかったりと大騒動になっているのが老舗レストラン「葵亭」だ。営んでいるのは慎重でありながら頑固な孤高のシェフ・時生(大沢たかお)である。時生は、当初、デミグラスソースがなくなり、コース料理の目玉料理が提供できなくなったため、この日の営業を取りやめようとしていた。だが今は一転して、営業することを決意。竹本(桜井ユキ)ら、従業員とともに仕込みを始めようとしていた。でもそれも、拳銃が見つかったことを聞きつけたマスコミが店に押し寄せたり、桔梗(中谷美紀)と同じ地元テレビ局に勤める娘の査子(福本莉子)が独占取材にやってきたりして、なかなか進まない。

 記憶喪失になってしまい、なんとしてでも自分のことを思い出したい誠司は、警察に追われている身なのに手がかりを求めて警察に潜入。桔梗は局の上層部から事件の特集はやめるように言われたにもかかわらず、特ダネを逃すまいと隠れて調査を続けており、時生以外のふたりの物語はなかなかスリリングな展開を見せている。それに比べると「葵亭」で起こっていることは、まるで別世界のようにコミカルで、そこの人々のやり取りもちょっとハートフルなものになっている。

 時生は「これ!」と決めたら意見を変えないところがあるが、同時にカッコつけでもあるのだろう。先程、デミグラスソースがなくなってしまった理由を「誠司が逃げ込んできて、寸胴鍋をひっくり返していった」というように書いたのだが、実際は、驚異の身体能力を持って厨房の中をアクロバティックに逃げていく誠司を見て、「自分にもできるのでは?」と思った時生が同じようにやってみたところ、ソースが入った寸胴鍋に激突してしまったのだ。つまり、このソース事件(?)の犯人は誠司のせいではなく、時生なのだ。体裁を保つため、従業員にしどろもどろになりながらも嘘の説明をする時生の姿は、カッコつけたいのについていなくて、なんともかわいらしく感じられた。

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