ドラマ版『EVOL(イーヴォー)』は音楽ファン必見! 鬼才・カネコアツシの世界観を堪能

 スーパーヒーローという架空のキャラクターはいつだって人々を魅了してきた。

 アメリカンコミックならスーパーマン、バットマン、スパイダーマン。近年なら、アベンジャーズなど。日本の特撮ものであれば、ウルトラマンや仮面ライダー、戦隊シリーズもそれに該当するだろう。

 特殊な能力を持ち、悪を駆逐して、世界の治安を守る。それが正義のヒーローに課せられた役割……のはずだが、肝心のヒーローが聖人とは限らない。市民を助けるどころか、害悪になりうるヒーローだっているかもしれない。

 事実、昨今のアメリカでは、マーベルの王道スーパーヒーローものに対して、『ウォッチメン』や『ザ・ボーイズ』などヒーローものの生々しい裏側を描いた作品が増えている。

 そんな中、カネコアツシが月刊コミックビーム(KADOKAWA)で連載中の漫画『EVOL(イーヴォー)』(6巻まで刊行中)が実写ドラマ化。2023年11月3日からDMM TVにて独占配信される。

『EVOL (イーヴォー)~しょぼ能力で、正義を滅ぼせ。~』予告編 -DMM TV

 『EVOL(イーヴォー)』もいわゆるスーパーヒーローが存在する世界を描いた作品だが、カネコアツシが生み出すヒーローものが王道路線のわけがない。正義のヒーローは暴走して弱き市民を叩き、息苦しい世界に絶望した少年少女はダークヒーローに目覚める。

 カネコワールドでは、正義と悪が単純な二分論では語られないのだ。

カネコアツシ

 スポ根、バトル冒険もの漫画全盛期の90年代初頭に、突如として現れた異能の漫画家、カネコアツシ。

 筆ペンを使ったアメコミタッチの画風と、音楽、映画、アメコミ、ストリートカルチャーをベースに、リアルとファンタジーの狭間を描く世界観が脚光を浴び、一躍オルタナティブなコミックシーンの旗手となった。『BAMBi』『SOIL』『デスコ』『サーチアンドデストロイ』などの数々の作品群は海外でも評価されており、フランスのメディアからは「漫画界のデヴィッド・リンチ」と賛辞の言葉が寄せられている。

 そんな鬼才が新たに描く『EVOL(イーヴォー)』が、このたび実写ドラマとなって、再びカネコムーブメントを巻き起こそうとしているのだ。

フランスのメディアに取材を受けるカネコアツシ
サイン会の様子

 『EVOL(イーヴォー)』の主要登場人物は、アメリカンコミックから飛び出してきたようなヒーローと、邪悪なワルモノ(イーヴォー)を目指す少年少女たち。

 特殊な能力を持つ血筋に生まれたヒーローは、ライトニングボルトと妹サンダーガール。

 2人は街の治安を守るべく巨悪に挑む……任務のはずだが、悪を倒したい気持ちとは裏腹に、市民を苦しめる悪の組織など存在せず、現実には市長に飼いならされ、市長と敵対するヤクザや悪徳業者を抹殺するという殺し屋の役割に甘んじている。

 ヒーローとはいえ、現実世界の中で生活している。薄汚い現実世界と折り合いをつけて大人としての任務をこなすしかない。

 一方、イーヴォーの道へと向かうのは、3人の少年少女だ。

 奇しくも同じ時期に自殺未遂を図って精神病院に収容された彼らは、遺伝的にヒーローしか持ちえないプチ特殊能力に突如芽生え意気投合。

 イノセントなティーン3人は、薄汚い世界と折り合いを付けることができない。「糞みたいな世界ならいっそのこと悪に染まってすべてをぶっ壊したい」という誰もが思春期に感じたことのある破壊衝動。3人はプチ特殊能力を武器に、「自殺するのも、世界が滅びるのも同じこと」とイーヴォーの道へと邁進する。

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 暴走する歪な正義のヒーローと絶望から破滅を望むイーヴォー。2つの異能者たちが、どう交わっていくのか。それがドラマの見どころである。

 話が進むごとに、従来の正義と悪の価値観からは想像もつかないほどブッ飛んだ展開が待っている。果たしてイーヴォーの3人に待っているのは明るい未来か、あるいは映画『ジョーカー』のような救いようのない悲劇か……。

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